私たちに必要な「お金」について‥‥時代を振り返る②(7月13日号)

クリスタの水野です。
私たちに必要な「お金」についての、2回目です。
先回は、1980年代から2010年までの日本の経済について書きました。
バブル経済とその崩壊。
政府が行う「緊急経済対策」に対して、根深い傷から立ち上がれない金融機関。
さらに、「財政構造改革法」による国民の負担増‥‥
今回は、日銀の国債の買取りにより資金の流通を増やす「量的緩和」をはじめとする、金融政策について書きます。
現在の金融緩和政策に繋がる時代を振り返ります。
量的緩和とは
ゼロ金利政策については、先回書きましたが、「量的緩和」策について、触れておきます。
簡単にいうと、市中に流通するお金の量(マネタリーベース)を、増やすと言うことです。
主に金融機関から国債を買い取って、日銀当座預金を増加させる(日銀が民間金融機関から国債を買い取り、日銀当座預金を増やす)政策を加速させた時代です。
マネタリーベースとは
マネタリーベースとは、世の中に供給されるお金の全てのことで、日銀が発行した日銀当座預金、紙幣発行残高と貨幣流通高(500円玉などの硬貨、貨幣は政府が供給)の合計金額です。
市中に流通している現金(紙幣+貨幣)と日銀当座預金の合計のことです。

日銀当座預金は、銀行や証券会社などの金融機関が日本銀行に預けているお金の合計で、民間金融機関は日銀当座預金を通じて銀行間取引などを行っています。
マネタリーベースに占める貨幣流通高は微々たるもので、日銀が刷った紙幣残高と日銀に預けられた当座預金残高の合計がマネタリーベースの金額とほぼ一致します。
アベノミクス3本の矢の一つ「大胆な金融政策」
2012年12月に発足した第二次安倍政権で、2013年3月に第31代日銀総裁に就任し、現在も日銀総裁を務める黒田東彦(ハルヒコ)氏は、政府に独自の経済政策について意見を進言、それがアベノミクス3本の矢(※)の一つ「大胆な金融政策」で、現在の金融緩和政策は、この延長にあります。
(※)アベノミクス3本の矢とは、最大目標を経済回復と位置づけ、
①大胆な金融政策(デフレ脱却を目指し、2%のインフレ目標が達成できるまで無期限の量的緩和を行う)②機動的な財政出動(東日本大震災からの復興、安全性向上や地域活性化、再生医療の実用化支援などに充てるため、大規模な予算編成を行う)
③民間投資を喚起する成長戦略(成長産業や雇用の創出を目指し、各種規制緩和を行い、投資を誘引する)
という3本の矢によって、日本経済を立て直そうという計画。
黒田総裁就任直後、第一弾の金融緩和=「異次元緩和」
黒田日銀総裁が2013年4月に打ち出した施策は、これまでの金融緩和とは量・質ともに次元が異なるとして「異次元緩和」、黒田バズーカ第一弾とも言われています。
第一弾 2013年4月
「量的・質的金融緩和」(QQE:Quantitative and Qualitative Monetary Easing)
“量”とは国債買い入れによる資金供給量の増加、“質”は期間の長い金利を低く抑えることを意味します。
第一弾 量的・質的金融緩和の内容
操作目標を無担保コール翌日物「ゼロ金利」から「マネタリーベース」へ変更し、「マネタリーベース」を2倍にするというインパクトのあるものでした。
日銀は経済に対するお金の供給量を増やし、実際に、2年後の2015年には、マネタリーベースは2倍となりました。
つまり、日銀は経済に対するお金の供給量を増やし、投資家に国債よりも貸し出しや株式投資を誘発することを考えたのです。当時の為替市場でドル高・円安が進んでいたこともあり、この政策は株価上昇を支え一時的に景気を上向かせました。これが黒田バズーカの第一弾です。

政府が国債を発行すると、いったんは一般の銀行や私たち個人が買います。 日銀は、一般の銀行が買った国債を買い上げて、同じだけのお金を発行できるわけです。
政府が国債をどんどん発行して、それを全部直接日銀に引き受けさせれば、日銀は結果的にお札をどんどん発行することができます。
太平洋戦争中、実際にそれをしたことによって、日本経済は大変なインフレになりました。
こうすることで政府が国債を発行するのを抑えて、お金の流れをコントロールするという、まさに「異次元緩和」です。


第二弾 2014年10月
しかし、物価上昇率2%という目標をクリア出来ない状況下、2014年4月、消費税率が5%から8%へ引き上げられたことを契機に、国内の景況感は悪化しました。
第二弾 量的・質的金融緩和/追加緩和の内容
2014年10月、日銀は量的・質的金融緩和の拡大(さらなる追加緩和)を決定し、より多くのお金を市中に供給し始めました。具体的には、
マネタリーベースの増加額を更に拡大する
マネタリーベースの年間増加ペースを年間「約60~70兆円」から「約70~80兆円」に拡大させる。
更に金利を下げる
長期国債の買い入れ残高を拡大して、更に金利を下げる。
株価を上げる
日銀の「ETF」(※1)買入れペースを「年間約1兆円」から「年間約3兆円」にする。
不動産価格を上げる
ETFと同じく「J-REIT」(※2)の買い入れペースを「年間約300億円」から「年間約900億円」にする。
日銀が、ETFや、証券化された不動産を買い増すことを進め、金利を下げることで不動産投資の金利も下がり不動産投資を活性化させ、不動産の価格の上昇を図ると言う物でした。
市場は日銀の決定を歓迎し、株価が上昇するなど景況感は上向きました。これが黒田バズーカの第二弾です。
(※1)ETFとは、上場投資信託のことを言います。ETFの仕組みについては、こちら
(※2)証券取引所に上場している投資信託の仲間。「REIT」という仕組みはアメリカで生まれ、「Real Estate Investment Trust」の略でREITと呼ばれています。
「J-REIT(不動産投資法人)」は、投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する投資信託商品のことを言います。
おわりに
こうして、黒田日銀総裁による第一弾、第二弾の金融緩和が実施されましたが、目標である2%のインフレ達成までは届かず、更なる金融政策として、第三弾の金融政策へと続きます。
次回は、その第三弾の金融政策について書かせていただきます。