私たちに必要な「お金」について‥‥時代を振り返る③(7月20日号)

クリスタの水野です。
私たちに必要な「お金」についてシリーズ、先回は、第二次安倍内閣以降の黒田東彦日銀総裁主導による日本の金融政策について書きました。
今回は、その続き、現在の金融政策につながる金融緩和「第三弾の金融(異次元)緩和」について、時代を振り返ります。
第三弾異次元緩和 2016年1月、9月
2016年1月「マイナス金利」追加
2015年に入ると、円安の流れに一服感が出始めましたが、2016年初以降、ドル安・円高が進み景気への懸念が高まり、金融政策として「量的・質的金融緩和」に「マイナス金利」を追加しました。
民間銀行が日銀へ預けている当座預金(日銀当預)の一部に-0.1%のマイナス金利を付与するというものです。
目的は、金融機関が日銀に資金を預けたままにしておくと金利を支払わなければならなくすることで、企業への貸し出しや投資に金融機関の資金を回すように促し、経済活性化とデフレ脱却を目指すものです。
2016年1月29日にマイナス金利付き量的・質的金融緩和を導入し、マイナス金利政策となりました。
しかし、マイナス金利導入後、日銀の国債大量購入が続き、国債金利が過度に低下してしまいました。
物価安定の目標である消費者物価上昇率2%は達成できないまま、2016年2月には、長期金利の10年物国債の金利までマイナスに突入してしまい、10年物国債自体で運用している投資家や、その金利に連動する形で商品を作っている銀行・保険・年金の運用にまで悪影響が出始めました。

10年もの国債の金利は、-0.047%となっています。
そこで、2016年9月に新たに二つの金融政策が追加されました。
長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和とオーバーシュート型コミットメント方針です。
1、2016年9月「長期金利操作(イールドカーブコントロール)付き量的・質的金融緩和」の追加
長期金利までマイナスに突入してしまったことを受け、10年物国債の金利を0%に誘導しようと次に発表されたのが、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和です。
イールドカーブコントロール「YCC:Yield(利回り) Curve(曲線) Control(操作)」は、日本銀行が短期政策金利と長期政策金利=国債買い入れ公開市場操作などの誘導目標を定め、その水準を実現するように国債の買い入れを行う金融緩和策のことを言います。
長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和
10年物より短い国債の金利は、マイナスに
10年物の国債の金利は、0%に誘導
10年物より長い国債の金利は、プラスに
日銀の国債の買い入れ対象を10年未満の短期の方に集中させ、短期の金利を下げて10年物国債の金利を0%(変動幅の上限目標は、0.25%以下)に誘導するものです。(※)
(※)現在は、米国の利上げ加速と更なる利上げ観測が強まる中、日本の10年国債の利回りは、変動幅の上限である0.25%以下誘導が困難になってきています。
利回りがマイナスの日本国債がなぜ買われるのか?
国債の利回りがマイナスということは、買って満期まで持っていると、払った金額よりも受け取れる金額が小さくなるけど、なぜ買う人がいるのでしょうか?
日本の国債を購入するのは、日本人だけではなく、世界の投資家が対象になります。
投資家が海外の資産を買うときに、相手国の通貨で購入すると、為替の変動によって損失が出たり、利益が出たりしますが、通常、これを避けるために為替ヘッジを行います。
為替ヘッジを行うと両通貨の短期金利の差額がコストとなるわけですが、売った通貨の金利を払い、買った通貨の金利を受け取る場合、日本円を売るとマイナス金利のために、マイナスの金利を払う=金利分を受け取れることになるので、海外の投資家からは、魅力的な投資対象になります。
海外から見ると、為替のヘッジを付けることで、利回りがマイナスでも日本国債が魅力的となるわけですね。
2、2016年9月「オーバーシュート型コミットメント」方針の追加
「オーバーシュート型コミットメント」
同時に、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまで、マネタリーベース(資金供給量)の拡大方針を継続するとした日銀の金融政策=「オーバーシュート型コミットメント」の方針が追加されました。
消費者物価上昇率が目標値を行き過ぎる(オーバーシュートする)まで金融緩和の継続を公約する(コミットメントする)という日銀の強い姿勢で、長短金利の操作を行うイールドカーブ・コントロールとともに導入されました。
これを根拠に、日銀の政策は現在も金融緩和を続けています。

消費者物価指数の推移(検証)
ちなみに、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまでというメッセージに対し、今日までの日本の「消費者物価指数」の推移を検証してみましたが、2013年以降の黒田日銀総裁の異次元緩和で、2%を達成できたのは、2014年に一度だけでしたが、皮肉なことに、輸入インフレで、国内物価が押し上げられ、2022年4月の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合ベースで前年比2.1%まで上昇しました。

黒田日銀総裁の金融政策まとめ

不透明感増す世界経済
以上、3回に渡って日本の現在の金融緩和政策に至る、約30年の経済政策をたどりましたが、コロナ禍、ウクライナ戦争による世界経済の影響を受け、今、日本経済も更に大きな節目を迎えています。
アメリカ、更なる利上げ。金利差広がる日米
7月13日21:30に発表された、6月の米消費者物価指数(CPI)は、予想値である前年同月比8.8%を遥かに上回る、9.1%上昇という非常に高い数値(約40年半ぶり)となりました。
予想を上回るCPIを受け、更なる利上げが予測されるドルに対し、金利差からドル買いが加速し、一時139円台前半までドル高/円安となりました。
連邦公開市場委員会(FOMC:Federal Open Market Commitee)による7月会合(7月27日、3:00予定)では、主要政策金利を75bp(ベーシスポイント、1bp=0.01%)=0.75%の利上げとすることがを織り込み済みとされてますが、止まらないCPI上昇を受け、更に高い100bp=1%の大幅利上げの動きも強まっています。
加速するのは、ドル高/円安だけではありません。
ドル高/ユーロ安も加速
7月13日の外国為替市場では、ユーロが売られ、1ユーロ=1ドルの等価(パリティ)を約20年ぶりに下回りました。(※)
背景には、ロシアのウクライナ軍事侵攻によるユーロ圏経済の情勢や、中国のコロナロックダウンによるアジア経済の情勢などから、安全資産と見なされるドルの買いにつながっています。
欧州中央銀行(ECB)は、量的緩和策を7月1日に終了することを表明しています。
7月21日の次回会合では、0.25%の利上げ(11年ぶり)に踏み切る方針を表明していますが、ユーロ安の加速が止まらないようです。
(※)パリティという用語は、取引においては複数の使用方法がありますが、常に、「等価」や「同等」を意味します。
パリティは、FX取引でよく使用され、2つの通貨が同価値の場合に言及されます。すなわち、2つの通貨の為替レートは1対1となります。
欧州、最悪のシナリオ
7月13日の欧州の株式相場は20%急落を見せましたが、もっと最悪で深刻なシナリオがあります。
欧州の天然ガス調達は島国の日本と異なり、液化天然ガス(LNG)よりも輸送コストが安いパイプライン経由が主流です。
欧州の天然ガス消費量の3分1程度はロシアからの輸入に頼っています。
大部分がロシアと欧州諸国を結ぶパイプラインで輸送されていますが、ロシアからドイツへの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」が、7月11日から、点検のためと称して現在、停止しています。
再稼働は、7月22日が予定されていますが、7月22日に再稼働となるのか?そのまま供給遮断されるのではないかという危惧が取り立たされていて、動向が注視されています。

ロシアから需要の多い欧州北西部へのガスのパイプラインは、大きく分けると3系統あります。
ロシア・ドイツ間を直接結ぶ「ノルドストリーム1」
ベラルーシ・ポーランドを経由する「ヤマル・ヨーロッパ」
「ウクライナ経由パイプライン」
の3系統のパイプラインです。
「ヤマル・ヨーロッパ」についても、ロシア政府の制裁によりガス輸送が停止しています。
「ウクライナ経由パイプライン」のガスは、2000年初めに減少して以降、輸出量が回復していません。
また、脱原発政策のドイツが主導して進めてきた「ノルドストリーム2」パイプラインについては、ロシアのウクライナ信仰の米政府による制裁や、ドイツのショルツ首相のプロジェクト承認停止により、操業は暗礁に乗り上げています。
唯一稼働していた「ノルドストリーム1」。
もしこれがストップ(供給遮断)すると、欧州のガス備蓄は、来年1月で底を突く恐れがあります。
ロシアによる揺さぶりとも見られていますが、ロシアからのエネルギーに頼ってきた欧州の弱点が露呈した形で、このことがユーロ安に更に拍車をかけています。
世界的なエネルギー需給問題に発展しますので、私たちにとって対岸の火事ではありません。
おわりに
3回に渡って時代を振り返り、日本の経済政策を書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。
「量的・質的金融緩和」の結果として、日銀の資産は膨張しましたが、経済成長までは至っていません。
しかし、今後(既に)、私たちの周りには、コロナ禍、ウクライナ戦争による物価上昇が押し寄せてきます。
次回は、「お金」と向き合い、豊かに生きる為の行動について、未来を予測し、私たちが、自分の資産を増やして守るためには、どうしたらいいのか‥‥
を、書きます。