米国証券取引委員会(SEC)による暗号通貨に対する規制③くりぷと知っ得情報(12月13日号)

クリプトスタディ(クリスタ)の水野です。
今回は、米国証券取引委員会(SEC)による暗号通貨に対する規制について、最終回です。
前回は、暗号通貨取引所と運用会社に対する、SECによる規制について書いてきました。
今回は、暗号通貨プロジェクトに対しての規制について書きます。
その前に‥‥
「Binance(バイナンス)」CEOのChangpeng Zhao(チャンポン・ジャオ:CZ)氏が、CEOを退任した2週間後、新しいCEOに任命されたリチャード・テン(Richard Teng)氏が、コインテレグラフ(Cointelegraph)(※)のインタビューに答えています。
インターネットとブロックチェーンという、「ボーダーレス」な取引が可能な暗号通貨取引所は、国境を跨いで様々な人の取引が可能です。
インタビューの中で、「一つの時代が終わったー」とありますが、チャンポン・ジャオ元CEOとBinanceは、自ら人柱となり、これからの暗号通貨市場のルールの明確化に一つの時代を作ったと思います。
暗号通貨取引所が世界の規制当局と緊密に協力し、基準を完全に満たしていくことでWeb3.0時代に向けて、今後の発展と取引所のステータスを保つ行為だったと思います。
(※)コインテレグラフ(Cointelegraph)は、暗号通貨(資産)・ブロックチェーン関連分野において世界で最も影響力のあるメディアの1つ。
暗号通貨に対する規制
米国証券取引委員会(SEC)は、2020年12月に米リップル社に対してXRP(※1)発行が違法であるとして訴訟を起こし、その直後にXRP価格は急落しました。
アメリカでは暗号資産が有価証券に該当するのか、それともコモディティ(※2)にあたるかの線引きについて議論が続いています。
有価証券とコモディティでは監督する規制当局が異なり、有価証券であればSECが監督し、コモディティであれば商品先物取引委員会(CFTC:Commodity Futures Trading Commission)が担当します。規制当局間の勢力争いもあり、どちらの規制対象になるかは決まっていません。
しかし、SECはXRPなど多くの暗号資産が有価証券に該当するとして、事業者を次々に摘発しています。そこで問題になってくるのは、暗号資産にどのような性質があれば有価証券に該当するかの明確な基準やガイドラインをSECが示していないことです。
(※)XRP(リップル)の技術的コンセプトは、ビットコインよりも4~5年さかのぼる2004年からカナダのプログラマー、ライアン・フッガー(Ryan Fugger)氏によって開発され、2012年より発行が開始されている暗号通貨です。リップルは専用の分散型台帳管理システム(XRP Ledger:XRPレジャー)を使っており、一般的なブロックチェーンは使われておらず、直接リップル社によって管理されています。リップルは数々の銀行と提携することに成功していて、アメリカンエキスプレスや各海外の中央銀行といった国際的な銀行だけでなく、日本の三井住友信託銀行や三菱UFJファイナンシャルグループといった大手銀行と提携が行われています。2016年には、日本のSBIホールディングスがリップルと共同で「SBI Ripple Asia」という会社を設立し、日本やアジア地域において暗号通貨技術を用いた新しい決済基盤を作りあげ、独自のソリューションを展開すると発表しました。その後もリップルは多くの日本企業と提携しており、徐々に拡大を続けています。
(※2)原油やガソリンなどのエネルギー、金やプラチナなどの貴金属、トウモロコシや大豆などの穀物といった商品のこと。
SECの降参⁉︎
米国証券取引委員会(SEC)は今年の10月19日、リップル社のブラッドリー・ガーリングハウス最高経営責任者(CEO)と、リップル社の元幹部クリスチャン・ラーセン氏に対する告発の棄却を裁判所へ申し出ました。
このニュースを受け、XRPの価格は前日比約6%上昇しました。
一方、SECは、リップル社への追及は今後も続けるとしています。
リップル社の最高法務責任者であるスチュアート・アルデロティ氏は「これは和解ではなく、SECによる降伏だ」と指摘しています。
つづく証券論争⁉︎
SECのゲンスラー委員長が、2022年9月にアメリカの上院公聴会でプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)(※)を採用する暗号通貨は証券の可能性が高いと指摘したことで、証券論争が激しくなりました。
PoSを採用する暗号資産ではステーキングサービスが提供されることがあります。
これが融資に該当するとの認識を示したためです。
PoSを採用している暗号通貨には時価総額2位のイーサリアム(ETH)があります。
もしイーサリアムが有価証券とみなされればNFT(ブロックチェーン上の唯一無二のデジタルデータ)やDeFi(分散型金融)といった領域への影響も出ると思います。
(※)PoSとは、プルーフ・オブ・ステイク(Proof of Stake)の略で、暗号通貨におけるコンセンサスアルゴリズム(合意形成アルゴリズム)の一つです。PoSでは、保有している暗号通貨の量に比例して、ブロックを生成する権限が割り当てられます。
SECが未登録証券と指摘する暗号通貨リスト
2023年6月現在、米証券取引委員会(SEC)が「未登録証券」と判断した暗号通貨のリストは、61種類、1150億ドル(約16兆円)相当に及んでいます。
こうした指定を受けると、厳しい投資家保護規則が適用されるため、SECの規則への抵触を恐れて取引所が指定の暗号通貨やトークンの上場を廃止するとか、取引が困難になる可能性があることから、リストに上がった暗号通貨の価格は大きく下落しました。
未登録証券と指定された主な暗号通貨と時価総額
バイナンスの「BNB」(時価総額約5.5兆円)
ソラナの「SOL」(時価総額約4.4兆円)
カルダノの「ADA」(時価総額約2.9兆円)
ポリゴンの「MATIC」(時価総額約1.2兆円)
ファイルコインの「FIL」(時価総額約3,300億円)
アルゴランドの「ALGO」(時価総額約2,400億円)
ステーブルコイン「BUSD(時価総額約2,130億円)
などが訴訟で言及されたトークンに含まれています。(時価総額は、執筆時点)
おわりに
3回にわたって、米国証券取引委員会(SEC)による、暗号通貨取引所、暗号通貨運用会社、暗号通貨プロジェクトに対する規制について書きました。
SECの調査の結果、11月22日、世界一の取引高の暗号通貨取引所「Binance(バイナンス)」が、銀行秘密法違反の罪を認め、司法取引としてCEOのChangpeng Zhao(ジャオ・チャンポン:CZ)氏がCEOを退任したことは、すでに書いたとおりです。
規制というと、なんか暗号通貨、やばいんじゃない?、と思う人もいるかもしれません。
私は、今回のバイナンスの一連の結末は、何かの駆け引きかもしれないと思いました。
例えば、今後、国の規制下でより良い暗号通貨市場を作っていく上での取引所のあり方であったり。
また、SEC側も、ビットコイン現物ETFの承認に向けて、飴と鞭みたいな。
皆さんはどう思われましたか?
今回は、ここまでです。
お読みいただいてありがとうございました。