大きく成長するカーボンクレジット市場とブロックチェーン技術⑩くりぷと知っ得情報(8月23日号)

クリプトスタディ(クリスタ)の水野です。

先回までは、カーボンニュートラルという概念が生まれた背景、カーボンクレジットという取引制度、その市場規模について書いてきました。

今回は、表題にもあるように、カーボンクレジットとブロックチェーン技術について、書いていきます。

ネットゼロ達成のために重要なカーボンクレジット市場

日本では、まだあまり認知されていませんが、世界中では、様々な企業がネットゼロ(カーボンニュートラル達成)宣言をしています。

2015年に採択されたパリ協定に企業が連動する形で、特定の年(2050年)までにその企業が排出する炭素(カーボン)を、排出量と削減または吸収量についてゼロにすることを自発的にコミットする動きです。

しかし、ネットゼロを宣言しても、企業活動の中で削減できる炭素は限られており、目標達成の妙に必要となるのが、カーボンクレジットとなります。

カーボンクレジットおさらい

「カーボン・クレジット(Carbon Credit)」とは、企業やプロジェクトが森林の保護や植林、または省エネルギー機器の導入などを行うことで生じた、CO2などをはじめとする温室効果ガスの削減効果(削減量や吸収量など)を「クレジット(排出権)」として発行することによって、ほかの企業やプロジェクトとの間で取引できるようにする仕組みです。

炭素の排出削減(吸収)量をクレジット(排出権)として発行し、取引可能にしたものです。

政府主導の規制の枠組み下で設立されたカーボン市場の他に、民間主導のボランタリークレジット市場があります。

企業が環境対策として取り組んでいる再生可能エネルギーの導入や、省エネルギー機器の導入のみでは達成することが難しいCO2削減達成目標を、ボランタリークレジットを活用することで埋め合わせることができるため、特にボランタリークレジットは注目を浴びており、市場は急成長しています。

ボランタリークレジットの市場規模

2021年の世界のカーボンクレジット発行残高は4.78億トンで、そのうち78%の3.62億トン、約74%をボランタリークレジットが占めています。

また、ボランタリークレジット市場は脱炭素化の目標設定を行う企業の増加により、2022年5月時点で14億ドル(2,000億円)に達しています。

2021年の平均価格は1トン当たり、前年の2.49ドル(約350円)から3.82ドル(約550円)に上昇。

また、2022年のボランタリークレジットの取引量については、前年度比92%増の3億6,200万トン超となり、価格と量の増加による市場規模の拡大につながってます。

Tesla(テスラ)社の事例

現在、私たちの身近な具体例としては、アメリカの電気自動車メーカー「Tesla(テスラ:創設者=イーロン・マスク等)」です。

EVメーカーのテスラは、2019年決算まで経常赤字が続いていましたが、2020年以降、連続で黒字化を果たしています。

その、黒字化への転換の大きな収益となったのが、ガソリン車を販売する自動車メーカーへのクレジット(温暖化ガスの排出枠)の外販などがあります。

カーボンクレジット市場の大きな課題

誕生して、まだ歴史が浅いカーボンクレジット市場ですが、大きな課題もあります。

パリ協定の目標達成のために、2030年度において、温室効果ガスを46%削減(2013年度比)を目指すことが必須ですが、2030年までにボランタリークレジット市場の取引量は15倍にも成長しなければならないと言われています。

効率の悪いクレジットの評価

カーボンクレジットは個々の削減プロジェクトによって「質」が大きく異なります。

故に、現在のカーボンクレジット市場では、その質の違いを差別化することが難しいと言われています。

具体的内容としては‥‥

1、クレジットの過大評価

言われているほどの炭素削減効果がないにもかかわらず、クレジットが過大評価されていないか、という点。

2、不透明な取引や価格決定プロセス

カーボン・クレジットは相対取引が中心となっているため、取引相手をどう確保するか、売買価格などの取引についてどう精査するかという、クレジットの発行から売買、保有、そしてオフセットまでの一連のトレーサビリティ(※)が十分に確保しにくいという点。

3、クレジットの重複カウントや詐欺的取引

同一の排出削減に対し、複数のクレジット発行や複数の使用などといったカウントの重複や、実際には未認証のクレジットを利用した詐欺的な取引などが問題視されている点。

(※)トレーサビリティとは、「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」を明らかにすべく、原材料の調達から生産、そして消費または廃棄まで追跡可能な状態にすることです。

では、こういった問題をどうやって解決できるのか?

カーボンクレジット市場の効率化に貢献するブロックチェーン技術

以上の問題点を解決することができるのが、ブロックチェーン技術です。

ブロックチェーンを使えば、「参加者の中に不正を働く者がいたとしても、改ざんが非常に困難で、多数の参加者に同一のデータを分散保持させる仕組み」ですので、正しい取引ができ、停止することもありません。

効率の悪いクレジットの評価をブロックチェーン技術で透明化する

温室効果ガスの削減効果の透明化

いつ、どのような方法で、どのくらい(数値)の温室効果ガスが削減できたか?

その評価を、誰でもがチェックできるブロックチェーン技術を使うことで、正当に評価をすることが可能になります。

トレーサビリティを確保

ブロックチェーン技術を用いることにより、「カーボン・クレジット(Carbon Credit)」の発行から売買、保有、そしてオフセットまでの一連のトレーサビリティが確保できます。

クレジットの重複カウント等防止、コスト削減

ブロックチェーン技術(分散型台帳)を採用することで、同一の排出削減に対し、複数のクレジット発行をしてしまったり、複数の使用をすることができなくなります。

未認証のクレジットを利用した詐欺的な取引などもできなくなり、また、維持管理に対するコストも、大きく抑えることが可能になります。

カーボンクレジットのNFT化

また、カーボンクレジットをNFT化することによって、パブリックなブロックチェーン上で、個々の削減データが固有のIDで紐づけられるので、認証機関の情報のみを信頼せざるを得なかったのが‥‥

購入者が削減プロジェクトのデータに直接アクセスできる

クレジットデータの質をいつでも、継続的にモニタリングすることができる

過大発行や二重発行・保有などのリスクを回避できるようになる

期待高まるボランタリークレジット市場の大きな牽引力

前述の通り、2030年までのカーボンクレジット市場の取引量は、大きく拡大していきます。

拡大していく市場を牽引していくのも前述の通り、民間主導のボランタリークレジット市場です。

待ったなしのストップ温暖化。
カーボンニュートルに向けて、ブロックチェーンが大きく貢献するのは、イメージ頂けたと思います。

おわりに

10回にわたって、大きく成長するカーボンクレジット市場とブロックチェーン技術について書いてきました。

私も応援しているJAMDAOというプラットフォームがありますが、そこでもKabbaraというブロックチェーン技術を使って、独自のカーボンクレジット事業を推進しているプロジェクトがあります。

ボランタリークレジット市場を牽引するプロジェクトを応援することも、大切ですね。

お読みいただいてありがとうございました。