証券会社が作った、新しいブロックチェーンRobinhood Chain⑥くりぷと知っ得情報10月21日号

クリプトスタディ(クリスタ)の水野です。
証券会社、Robinhood Markets社が自社のサービス(株式トークンやDeFi機能)を動かすために作った「基盤・インフラ」Robinhood Chain(ロビンフッドチェーン)について、シリーズで書いています。

🔶Robinhoodは、なぜ自前のブロックチェーンをつくったのか?
くりぷと知っ得情報9月16日号🔶Robinhood Chainと、イーサリアム(ETH)、アービトラム(ARB)の役割分担
くりぷと知っ得情報9月23日号🔶「Stock Tokens(株式トークン)」について①
くりぷと知っ得情報9月30日号🔶「Stock Tokens(株式トークン)」について②
くりぷと知っ得情報10月7日号🔶UniswapがRobinhood Chainの中心にある理由
くりぷと知っ得情報10月14日号

現在、Robinhood Chainには様々なアプリが乗っていますが、「Uniswap(ユニスワップ)」が取引の中心的な存在になっている点について、前号では書きました。
なぜUniswapには、これほど大量のプールが生まれているのでしょうか。

今回のテーマはこちらです。

なぜUniswapに大量のプールが生まれているのか?

前号では、Robinhood Chainの取引の「入り口」としてUniswapが中心的な存在になっていることを見てきました。実はそのUniswapの中では、今、とてつもない数の「プール」が次々と生まれています。

復習:プールは「自動両替機」

プールとは、前号で触れたとおり、2種類のトークンをためておく共用の箱で、「自動両替機」の役割を果たすものです。
たとえば「株式トークンとステーブルコイン」の組み合わせなら1台、「新しいトークンとETH」の組み合わせなら別の1台、というように、組み合わせごとに1台ずつ両替機が必要になります。
つまり「プールが大量にある」とは、「両替機の台数が大量にある」ということで、台数が増える背景には、大きく4つの理由があります。

理由①:誰でも、許可なしで作れる

Uniswapの公式ドキュメントには、「誰でも、スワップ(交換)、流動性の提供、新しい市場の作成を自由にできる」と書かれています。(参考)
証券取引所のように「この銘柄を上場させてください」と審査を受ける必要はなく、誰でも自分で両替機を設置できます。
これが、プールが爆発的に増えられる土台です。

理由②:「トークンを作る」と「プールを作る」が一体になった

プールが急増した最大のきっかけは、2026年8月5日(報道により6日)にUniswapが始めた、新しいトークンを発行するための場所=「Pools.trade」です。
ここでは、トークンを作ると、取引に使うプール(Uniswap v4)が自動で一緒に設置されます。
「屋台を出すための手続きを、ボタン一つで済ませてくれる」v4(※)は、Uniswapの新しい版(バージョン)で、ポイントは2つあります(Uniswap公式ブログ)。
🔹プールが安く作れる以前は、プールごとに別々の仕組み(プログラム)を設置していました。
v4は、すべてのプールを1つにまとめて管理します。
店ごとに建物を建てるのではなく、大きなビルに店が入る形で、新しい店を出す費用が小さくなります。
発表時の初期の見積もりでは、プールを作るコスト(ガス代)が約99%減るとされていました。
🔹「フック」で機能を足せるプールに後から機能を付け足せる、プラグインのような仕組みです。プールを作る手間と費用が小さいことが、「Pools.trade」のようにプールを大量に作る仕組みの土台の一つになっていると考えられます。
報道によると、次のような特徴があります。

発行枚数は10億枚で固定

どのトークンも、最初から発行枚数が10億枚と決まっています。(参考)
全トークンが10億枚で始まるため、「1枚の値段×10億枚」がそのまま評価額になります。(参考)

2つの発行方法

🔶クラウドローンチ4時間かけて入札を集める方式で、最低1万ドルの評価額に届かなければ返金されます。
クラウドローンチの最低ライン(評価額1万ドル)なら、1枚あたりは約0.00001ドル。評価額が100万ドルになれば、1枚あたり0.001ドルです(評価額÷10億枚の単純計算)。
株を裏付けに枚数が増減するStock Tokensと違い、Pools.tradeのトークンは枚数が最初から決まっています。
🔶インスタントローンチ
トークンを作ったら、その場ですぐ売り買いが始められる発行方法です。
クラウドローンチのように4時間待つ必要はなく、「最低いくら集める」という条件もありません(crypto.news、Uniswap公式ブログ)。値段は「ボンディングカーブ」(※)という計算式で自動的に決まり、人気が出るほど値札が上がるフリーマーケットのようなもので、値札を書き換えるのは人ではなく計算式です。(参考)
「何枚売れたか」で値段が自動的に決まるので、作った直後で売り手も買い手もいなくても、最初の1枚から値段がつき、すぐ取引を始められます。
Uniswapのヘルプにも、価格は買われるにつれてボンディングカーブに沿って上昇し、いつでも売買できると書かれています(Uniswapヘルプ)。手数料(0.25%)や、最初に入れた資金を引き出せない点は、クラウドローンチと同じです。ただ、すぐ売買できることは、安全という意味ではありません。Uniswap自身が「価格は非常に変動が大きく、ゼロになる可能性がある」「どのトークンも独自に審査・確認していない」と明記しています(参考)。

(※)ボンディングカーブ(Bonding Curve)とは、暗号資産やDeFi(分散型金融)の分野で使われる、トークンの供給量と価格の関係を数式によって自動的に決定する仕組みになります。

手数料

専用の追加手数料はなく、取引ごとに0.25%のプール手数料がかかります(作成者が希望すれば、そのうち0.05%を受け取れます)

流動性は永久ロック

作成者が最初に入れた資金を引き出せない設計で、いわゆる「持ち逃げ(ラグプル)」を防ぐ狙いがあります。
この簡単さの結果、立ち上がり直後から大量のトークンが生まれました。
初日に発行されたトークンは約6,000件〜1万件超(報道により差があります)で、開始から2日で累計2万件を超えたとの報道もあります(CoinGabbar、KuCoin)。
トークン1つにつき1つのプールができるので、その分、プールも増えたわけです。


また、Robinhood Chain上には、Pons(ポンズ)という別のトークン発行サービスもあり、累計で16万以上のトークンが作られたと報じられています(Atomic Wallet)。
名前・ティッカー・画像を選ぶだけで、プログラムを書かずにミームコイン(話題性で値動きするトークン)を作れる点は、Pools.tradeと同じです。
ソラナ(SOL)で有名な「Pump.fun」のRobinhood Chain版、と報じられています(Decrypt)。
🔹発行枚数は10億枚で固定。チーム用の取り分はありません(Decrypt)。
🔹取引資金はPons(ポンズ)側が預からず、作成も取引も本人のウォレットで行います。
🔹最初は「買われるほど値段が上がる」方式で取引され、目標に届くと資金が固定されたプールに移ります(Airdrop Alert)
Pools.tradeは、発行所としての上乗せ手数料を取りません。かかるのは、取引ごとの通常のプール手数料(0.25%)だけです。
他の発行所では約1%かかるところもあるとされています(Uniswap公式ブログ)。
どちらも、作られたトークンを審査していません。大口保有者への偏りや価格操作、売り抜けは、どちらでも起こり得るとされています(Airdrop Alert)。

(※)整理しておきます。

版

ひとこと

特徴

Uniswap v2

基本形

2種類のトークンをプールに預け、すべての価格帯にまんべんなくお金を広げる。手数料は一律

Uniswap v3

効率化版

「この価格帯だけ」と範囲を指定してお金を置ける(集中流動性)。少ない資金でも取引を支えられ、手数料の段階も選べる

Uniswap v4

カスタム版

プールごとに「フック」で機能を追加できる。手数料の自動調整や指値注文など。全プールを一つの仕組みにまとめて、手数料(ガス代)も安くなる

Uniswap X

注文を業者に競わせる方式

自分でプールを使うのではなく「この条件で交換したい」という注文を出す。それを業者(フィラー)が競って実行し、ユーザーはガス代不要で、割り込み被害(MEV)にも強い

理由③:Stock Tokensの「組み合わせ」が多い

プールが増えるのは、新しいトークンだけが理由ではありません。
Stock Tokensは約190銘柄あり、「株式トークン×ステーブルコイン」のほか、さまざまなトークンと組み合わせたプールが作られています。
報道によると、2026年9月1日の時点で、株式トークンと他のトークンを組み合わせたプールは432個確認されました。
さらに、翌日には、株式トークンと組み合わされたミームコイン(話題性で値動きするトークン)の取引高が約2.17億ドルとなり、その日のスナップショットでは、通常のStock Tokensの取引高を上回ったとされています(Atomic Wallet)。

理由④:集まるほど、さらに増える好循環

こうした仕組みは、一度回り始めると加速します。Atomic Walletの記事は、次のような循環を指摘しています。
1、新しいトークンが次々に作られる
2、それを狙って、トレーダーが集まる
3、取引で手数料やお金が生まれる
4、それを見て、さらに作る人が集まる
プールが多いことは、それだけ新しい「賭けの対象」が供給され続けていることを意味します。

「プールが多い」=「良いこと」とは限らない

Uniswap自身が、Pools.tradeに並ぶ資産は「きわめて値動きが大きく、ゼロになる可能性がある」と警告していて、個別のトークンの信頼性は確認していないとしています。
流動性が永久ロックされていても、プログラムの不具合や、特定の人への保有の偏り、価格操作といったリスクは残ります。
また、発行数や取引高の数字は、報道ごとに大きく食い違っており、運営側の自己申告も多く含まれます。数が多いことと、価値があることは別の話です。

おわりに

Uniswapに大量のプールが生まれているのは、「誰でも作れる」仕組みの上に、「トークンを作ると自動でプールもできる」発行サービスが登場し、さらに株式トークンとの組み合わせまで加わって、増える流れが加速したためです。
ただし、増えているプールの多くは話題性で動くトークンのもので、株式トークンの取引とは性質が異なります。
次回は、プールに資金を預けて手数料を得る人「LP(Liquidity Provider:流動性提供者)」にとって、Stock Tokensのプールは本当に儲かるのかを取り上げたいと思います。
お読みいただきありがとうございました。