証券会社が作った、新しいブロックチェーンRobinhood Chain⑦くりぷと知っ得情報10月28日号

クリプトスタディ(クリスタ)の水野です。

証券会社、Robinhood Markets社が自社のサービス(株式トークンやDeFi機能)を動かすために作った「基盤・インフラ」Robinhood Chain(ロビンフッドチェーン)について、シリーズで書いています。

🔶Robinhoodは、なぜ自前のブロックチェーンをつくったのか?

くりぷと知っ得情報9月16日号

🔶Robinhood Chainと、イーサリアム(ETH)、アービトラム(ARB)の役割分担

くりぷと知っ得情報9月23日号

🔶「Stock Tokens(株式トークン)」について①

くりぷと知っ得情報9月30日号

🔶「Stock Tokens(株式トークン)」について②

くりぷと知っ得情報10月7日号

🔶UniswapがRobinhood Chainの中心にある理由

くりぷと知っ得情報10月14日号

🔶なぜUniswapに大量のプールが生まれているのか?

くりぷと知っ得情報10月21日号

前号では、なぜ「Uniswap(ユニスワップ)」に大量のプールが生まれているのか、その背景について書きました。

今回は最終回。

テーマは、ずばりこちらです。

Robinhood Chainに生まれる金融アプリ

これまでは、米国の有名企業の株価に連動する暗号資産「Stock Tokens(株式トークン)」と、その売買の中心になっているUniswapを見てきました。

しかし、Robinhood Chainの上で動いているのは、取引所だけではありません。お金を貸し借りするサービス、先物を取引するサービスなど、「金融アプリ」が少しずつ増えています。

Robinhood Chainの上には、取引所のほかに、どんな金融アプリがあるのでしょうか。

全体像:チェーンに預けられているお金の中身

DefiLlamaの集計(2026年10月22日時点)では、Robinhood Chainに預けられている資産の量(TVL:Total Value Locked)は約11.5億ドルで、上位のサービスは、次のとおりです。

貸し借り

Morpho(モルフォ)

約6.1億ドル

取引所

Uniswap(ユニスワップ)

約3.1億ドル

先物取引

Lighter(ライター)

約1.1億ドル

9月21日時点の分析で、預けられたお金の約3割が貸し借り(レンディング)、約3割が運用で、取引所は約2割でした(Chainstack)。

Morpho(モルフォ):貸し借り

Morpho(モルフォ)は、お金を貸したい人と借りたい人をつなぐ、貸し借り(レンディング:Lending)のサービスです。

借りる人は担保を預けて借り、契約期間に応じた利息を払います。

その利息が、貸した人の収入になります。

この仕組みを使っているのが、Robinhood Marketsが提供する「Robinhood Earn」です。

ステーブルコイン「USDG」を預けると、Morphoの貸し出し用の箱である金庫(Vault:ボールト)に入り、借り手が払う利息が分配されます。

Robinhood Marketsのアプリの中から使えます(Morpho、2026年7月1日付)。

公開時の報道では、利回りは年約7%とされました(DeFi Prime)。

USDGとは?

「USDG」(Global Dollar)は、米ドルに連動するステーブルコインです。

Paxos(パクソス)が発行し、1USDGを1ドルと交換できる設計で、ドルの準備資産で裏付けられているとされています(Global Dollar公式)。

Robinhood Marketsがこのチェーンの標準的なステーブルコインに選び、チェーン上のステーブルコインの約65.7%を占めています(2026年10月22日時点、DefiLlama)。

特徴は、準備資産で生まれる利息を、USDGを広める取引所やアプリに分け与える仕組みです(Datawallet)。

ただし、流通量は約30億ドルとUSDCやUSDTより小さく、実績も短いとされています。また、Paxosは利用規約に基づいてトークンを凍結できます(Datawallet)。

銀行預金とは違う

Robinhood Earnの説明ページには、次のように書かれています。(要約)

🔹利率は固定でも約束されたものでもなく、変動し、ゼロになることもある

🔹FDIC(預金保険)やSIPC(証券投資家保護)の対象ではない

🔹Vault(ボールト)の資金が足りないときは、引き出しが遅れることがある

🔹プログラムの不具合や、USDGが1ドルから外れるリスクがある

🔹利用できる地域には制限がある(ニューヨーク州とテキサス州では利用不可)

同ページは、「預けた元本の一部または全部を失う可能性がある」とも、明記しています。

LighterとArcus:先物取引

永久先物取引(Perpetual:パーペチュアル、永久先物 )は、期限のない先物取引で、実際に商品を持たなくても、価格の上がり下がりに賭けられます。

少ない元手で大きな取引ができる(レバレッジ)反面、損失も大きく、値動きしだいで短時間で強制的に決済されることがあります。(crypto.news)

Lighter(ライター)

Lighter(ライター)は、先物取引のサービスで、Robinhood Walletの中で使えます。担保には「USDG」(Global Dollar)を使います(crypto.news)。

ただし、Robinhood Walletからの先物取引は、米国や英国、カナダなど一部の地域では使えません。

Lighterの「ゼロ知識ロールアップ」とは?

Lighter(ライター)は、英語で「ZK-Rollup:Zero-Knowledge Rollup(ゼロ知識ロールアップ)」と呼ばれる仕組みでできています。

取引の処理をイーサリアム(ETH)の外でまとめて行い、「処理が正しい」という暗号の証明だけをイーサリアム(ETH)に提出する方式です。(Ethereum公式)。

大量の領収書を現場で集計し、検算済みの報告書だけを出すようなもので、利用者のお金は、イーサリアム(ETH)上のプログラムに預けます(Blockworks)。

Lighter(ライター)公式には、Lighterが止まっても、引き出す権利は保証されると書かれています。

なお、「ゼロ知識」という名前でも、取引が秘密になるわけではありません。

名前は、中身を明かさず正しさだけを証明できる暗号の考え方に由来します。

Arcus(アーカス)

Arcus(アーカス)は、dYdXという有名な取引所を作ったチームが開発しました。

Robinhood Cryptoが出資しています。Stock Tokens(95銘柄以上)を手数料0%で取引できるほか、株式やETF、商品、暗号資産の先物(ベータ版)も扱います(The Block、2026年7月21日付)。

他にも、いろいろ‥‥

取引所は、Uniswapだけではありません。ほかにも、次のようなサービスが挙げられています。

Pleiades(プレイアデス)

自前の取引の仕組み(AMM)を使って、プロの取引業者(プロップトレーダー)が取引する場として、公開時から参加しています(Robinhood公式発表)。

Rialto(リアルト)

暗号資産と、株式などをトークン化した資産を売買できる取引所です。

自前の取引の仕組みに、外部の業者の資金も組み合わせて取引します(Rialto公式、Alchemy)。

1inch(ワンインチ)

複数の取引所の中から、条件のよい取引先を探して注文を届ける仕組みを持つサービスです。

公開日の2026年7月1日から対応しています(1inch公式ブログ)。

このほか、価格情報を届けるチェーンリンク(LINK)や、資産を保管するビットゴー(BitGo)など、裏方のサービスも集まっています(DeFi Prime)。

Robinhood Chainは、世界の証券市場を変えるのか

最後に、シリーズ全体をとおして、確認できた事実だけ整理すると、次のとおりです。

市場は伸びているが、まだ小さい

株式のトークン化は、世界全体で約31.7億ドル(2026年9月28日時点)で、前年の約4倍です。Robinhood Chainのシェアは約5.1%(約1.5億ドル)です。(RedStone)。

株主としての権利はない

Stock Tokensは、株式の所有権や議決権を与えるものではありません。

保有者は、発行元である、Robinhood Assets (Jersey) Limitedに対する請求権を持つ形です(DeFi Prime)。

米国など一部の地域では、そもそも提供されていません。

規制は動き始めている

米国証券取引委員会(SEC:Securities and Exchange Commission)は、2026年9月17日に「イノベーション免除」を出しました。

株式トークンの取引所が、登録なしで営業できる5年間の特例です。(Coinpost)

ただし、トークンには通常の株式と同じ権利が必要です。

「同じ権利」とは、配当を受け取る権利や議決権など、本物の株主と同じ立場のことで、今のStock Tokensは、これらの権利を与えていません(CoinDesk、Davis Polk)。

おわりに

Robinhood Chainは、株価に連動するトークンを、24時間、誰でも売買できる場を作りました。

取引所、貸し借り、先物取引といった金融アプリも育ち始めています。ただし、「世界の証券市場を変えた」と言える段階には、まだありません。

規模はまだ小さく、株主の権利はなく、チェーンの運営もRobinhood Marketsに大きく依存しています。

変わるかどうかは、これから、規模が広がるか、権利が整うか、規制がどう動くか、にかかっています。

お読みいただきありがとうございました。