次世代DEXで注目を集めるハイパーリキッド(HYPE)③くりぷと知っ得情報7月8日号

クリプトスタディ(クリスタ)の水野です。
シリーズで、いま世界中のトレーダーから注目されている、ハイパーリキッド(HYPE)について、書いています。
🔶ハイパーリキッド(HYPE)の概要くりぷと知っ得情報6月24日号🔶ハイパーリキッド(HYPE)がDEX市場のトップに立つまでの軌跡
くりぷと知っ得情報7月1日号
前号では、ハイパーリキッド(HYPE)が、ゼロから立ち上がり、わずか数年でDEX市場の頂点に立つまでの軌跡についてまとめました。
今回は、ハイパーリキッド(HYPE)は、「なぜここまで速いのか?」という技術面の秘密に迫ります。
なぜHyperliquidは速いのか?

そもそも「なぜ『速さ』が重要なのか」ということですが‥‥
暗号資産の取引所において、「速さ」は想像以上に重要です。
たとえばビットコイン(BTC)が急落し始めたとき、売り注文を出してから実際に約定(取引が成立)するまでに数秒かかると、その間にさらに価格が下がってしまいます。
これを「スリッページ」といいます。
また、注文が詰まって処理待ちになると、「ガス代(ネットワーク手数料)」が急騰することもあります。
従来の分散型取引所(DEX)はこの「遅さ」が長年の弱点でした。
取引のたびにイーサリアム(ETH)などの既存チェーンに処理を依頼する構造だったため、混雑すると数秒〜数分かかることも珍しくありませんでした。
ハイパーリキッド(HYPE)はこの問題を根本から解決するために、「他のチェーンの上でアプリを動かす」のではなく、「取引専用のチェーンをゼロから自分たちで作る」「独自Layer 1(レイヤー 1)チェーンを作る」という選択をしました。
独自L1チェーンを作った理由
一般的なDEXとHyperliquidの違いを、レストランにたとえると分かりやすいです。
一般的なDEXは「他のオーナーが持つビルの中に間借りしているレストラン」です。
ビルの電気やエレベーターは共用なので、他のテナントが混雑していると自分のお店も影響を受けます。
一方Hyperliquidは「自分たちで一棟まるごとビルを建てたレストラン」です。
電気も水道も配線も、すべて自分たちで最適化できます。
Hyperliquidは既存のネットワークのフォークではなく、独自に開発されたLayer 1ブロックチェーンです。
つまりイーサリアム(ETH)など既存チェーンのコピーや改造ではなく、取引のためにゼロから設計された専用インフラというわけです。

HyperBFT/速さを支えるコンセンサスアルゴリズム
ブロックチェーンには必ず「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる仕組みが必要です。これは「この取引は正しいか?」をネットワーク参加者全員で確認し合う合意プロセスのことです。
銀行にたとえると、送金が正しいかどうかを複数の担当者が確認してハンコを押す作業に相当します。
この確認作業が速ければ速いほど、取引が素早く完了します。
ハイパーリキッド(HYPE)が採用したのが、独自開発の 「HyperBFT」 です。
HyperBFT
HyperBFTは、HotStuffとその後継アルゴリズムから着想を得たカスタムコンセンサスアルゴリズムで、アルゴリズム自体とネットワークスタックの両方が、Layer 1(レイヤー 1)としての独自の要求に応えるためゼロから最適化されています。
「ネットワークスタック」とは、ノード(ネットワークに接続されている機器)同士が情報をやり取りする通信の仕組み(インターネット回線やデータの送受信方法)のことです。
少し、難しいですね(笑)😯😯
「コンセンサスアルゴリズムの中身だけでなく、ノード間の通信のやり取り方法そのものも、ハイパーリキッド(HYPE)専用に一から作り直した」という意味です。
例えるなら、レースカーを作る際に「エンジン(アルゴリズム)」だけでなく「タイヤや配線(通信の仕組み)」までゼロから専用設計した、というイメージです。
一般的な汎用ブロックチェーンが既存の通信方式を流用するのに対し、ハイパーリキッド(HYPE)は取引の超高速処理という目的のために、通信レベルから作り込んでいる点がポイントです。
HotStuffに着想を得たアルゴリズム
HotStuffとは、2018年にVMware(ヴイエムウェア)(※)の研究者たちが発表した、ブロックチェーン向けの「多数決ルール」の仕組みです。
ブロックチェーンは世界中に散らばった大勢のコンピューター(ノード)が協力して動いています。
その中に「嘘をつくコンピューター」や「突然止まるコンピューター」が混じっていても、残りの正直なコンピューターだけで正しい取引記録について全員が合意できるようにするための手順書、それがHotStuffです。
従来の同様の仕組みと比べて「通信のやり取りが少なくて済む=速い」という点が革新的で、ハイパーリキッド(HYPE)はこのHotStuffをさらに自社向けに改良して、HyperBFTを生み出しました。(参考)
(※)VMware(ヴイエムウェア)とは、アメリカの大手ITインフラ企業で、企業向けのサーバー仮想化ソフトウェアで世界的に知られていて、2023年に半導体大手のBroadcom(ブロードコム)に買収されました。
ブロックチェーン研究にも積極的に取り組んでおり、HotStuffはその研究成果の一つです。
HyperBFT自体の公式な技術文書はまだ公開されておらず、HotStuffに「大きく着想を得ている」ということしか明らかになっていません。
ただし、実際の性能数値ははっきりと公開されています。
それは‥‥
注文を出してから確定するまでの時間は、
平均でわずか0.2秒。ほぼすべての注文が0.9秒以内
に処理されます。
銀行の窓口にたとえるなら、書類を出した瞬間にハンコが押されて返ってくるようなイメージです。
処理能力も、
1秒あたり最大20万件の注文に対応
していて、これは
クレジットカード決済システムを上回る水準
です。
また、耐障害性の面でも優れていて、HotStuffをベースとするBFT(Byzantine Fault Tolerance:ビザンチン・フォールトトレランス:ビザンチン耐性)(※)の特性により、最大3分の1のバリデーターが悪意ある動作や故障をしていても、ネットワークは合意形成を継続できます。
一部の参加者が不正を働いても、全体としては正しく機能し続ける設計です。
(※)BFT(ビザンチン・フォールト・トレランス)とは、分散システムにおいて、一部の参加者が故障や偽情報の送信、または悪意ある行動をとる場合でも、ネットワーク全体として正しい合意を形成し、機能し続けることができる障害耐性の特性を指します。(参考)
さらに、一般のトレーダーにとってうれしいのが、「MEV攻撃」(Maximum Extractable Value)をほぼ防げる点です。
MEV攻撃とは、ボットが他人の注文を見て素早く割り込み、わずかな差益を抜き取る手法で、既存のDEXでは長年の問題でした。
Hyperliquidは取引の処理順序が明確に確定しているため、この攻撃が入り込む隙がほぼありません。
完全オンチェーンのオーダーブック方式
Hyperliquidのもう一つの特徴が、「完全オンチェーンのオーダーブック方式」です。
オーダーブックとは、「○○円で買いたい人」「○○円で売りたい人」の注文を一覧にした板情報のことです。
中央集権型取引所では、この板情報を取引所のサーバーが管理しています。つまり、取引所が「いくらで誰と誰が取引したか」を把握しており、ユーザーはそれを信じるしかありません。
一方、Hyperliquidでは、完全にオンチェーンで永久先物と現物の両方のオーダーブックが運用されており、すべての注文・キャンセル・約定・清算がHyperBFTから受け継いだワンブロックでのファイナリティ(確定性)のもと、透明性をもって実行されます。
誰でも板情報を確認でき、取引の改ざんができない設計になっています。
多くのDEXが採用する「AMM(自動マーケットメイカー)方式」と比較すると、オーダーブック方式は特に大口取引やレバレッジ取引においてスリッページが少なく、プロのトレーダーが使いやすい環境を提供できます。
その、比較表を作りました。👇
比較項目 | AMM方式(一般的なDEX) | オーダーブック方式(Hyperliquid) |
|---|---|---|
仕組みの例え | 自動販売機プールにある資金と自動でやり取り | 競りの会場売り手と買い手が値段を出し合って取引 |
価格の決まり方 | 数式(x×y=k)で自動計算 | 買い注文・売り注文の板で決まる |
大口取引のスリッページ | 大きくなりやすい大量に買うほど価格が不利になる | 小さく抑えられる指値注文で希望価格を指定できる |
レバレッジ取引 | 不向き | 対応(最大125倍まで可能) |
透明性 | 部分的 | 完全オンチェーン |
流動性の提供者 | 一般ユーザー(LP)が資金を預ける | マーケットメイカーや一般ユーザー(HLP) |
プロトレーダー向け | やや不向き | 非常に適している |
主な採用例 | Hyperliquid・dYdX・中央集権型取引所 |
HyperEVM〜取引所を超えたエコシステムへ
ここまでは「速さ」と「透明性」の話でしたが、ハイパーリキッド(HYPE)はさらに大きな野望を持っています。
それを実現するのが 「HyperEVM」 です。
HyperEVMとは
HyperEVMは、イーサリアム(ETH)の実行環境(EVM:Ethereum Virtual Machine)をHyperliquidのLayer 1ブロックチェーンにシームレス(seamless:縫い目や継ぎ目がない)に統合したものです。
従来の独立したEVM実装とは異なり、HyperliquidのコンセンサスレイヤーであるHyperBFT内で動作し、統一された機能性を実現しています。
少し難しく聞こえますが、「イーサリアム(ETH)上で動くアプリをそのままHyperliquid上でも動かせるようにした仕組み」です。
世界中の開発者がイーサリアム(ETH)で使ってきたプログラミングの資産をそのまま活用できるため、Hyperliquidのエコシステムに新しいアプリケーションが集まりやすくなります。
💡ここで先ほどのHyperBFTの話とつながってきます。
HyperBFTは同じ状態とデータ可用性レイヤーを共有することで、HyperCore(高性能取引エンジン)とHyperEVM(スマートコントラクト環境)の両方を保護しています。
実行環境こそ異なるものの、統一されたコンセンサスによってエコシステム全体で一貫性と同期が保たれているのです。
言い換えると、取引所部分とアプリ開発部分は別々の建物ではなく、同じ警備システムで守られた同じ建物の中にある、というイメージですね。

取引所とスマートコントラクトをつなぐ
HyperEVMの最大の特徴は、取引所の機能と直接つながっている点です。
HyperEVMのスマートコントラクトは、Hyperliquidのコアシステム(オンチェーンの現物市場および先物のオーダーブック)と直接相互作用できます。
これにより、EVMベースのアプリケーションと取引インフラの接続が簡素化されます。
たとえば、「BTCが○ドルを下回ったら自動で決済する」「複数の取引を組み合わせた複雑な戦略を自動実行する」といった高度な金融アプリを、Hyperliquidの高速な取引環境と組み合わせて動かすことができます。
これにより、開発者はオプション市場や清算ボットなどの高度なDeFiアプリケーションを構築できるようになりました。
2025年2月 メインネット稼働
HyperEVMは2025年2月にメインネットが稼働し、Hyperliquidは「単なる取引所」から
開発者が自由にアプリを構築できるエコシステム
へと進化しました。
CoreWriter
HyperEVMをさらに強力にしているのが「CoreWriter」と呼ばれる仕組みです。💪
CoreWriterとは、HyperEVM上のスマートコントラクトが、HyperCore(高性能取引エンジン)に直接「命令」を送れるようにするための橋渡し役です。
たとえるなら、
アプリ側のプログラムが、取引所の注文板に直接注文を出せる
というイメージです。
これにより、「BTCが〇ドルを下回ったら自動で売り注文を出す」「担保が不足したら自動で清算する」といった、これまで人間が手動でやっていた複雑な金融操作を、プログラムが自動で実行できるようになりました。

実際にHyperliquid、Felix、Kinetiqといった複数のプロトコルがすでにCoreWriterを活用した新機能を展開しており、HyperEVMはもはや取引所の「おまけ」ではなく、DeFiエコシステム全体のプログラム可能な決済レイヤーとして機能し始めています。
HyperEVMアプリとHyperCore(高性能取引エンジン)のネイティブな連携が強化されることで、現在は難しい新しいプロトコル設計が可能になると期待されています。
まとめ
Hyperliquidの速さは一つの技術だけによるものではなく、複数の要素が組み合わさっています。
独自L1チェーン
取引専用に最初から設計したブロックチェーンで、他チェーンの混雑に左右されない
HyperBFT
平均0.2秒という驚異的な速度で取引を確定する独自のコンセンサスアルゴリズム
オンチェーンオーダーブック
すべての注文データをブロックチェーン上で管理する透明性の高い設計
HyperEVM
HyperBFTという同じ土台の上で、取引所の機能とスマートコントラクトを直接つなぐ仕組み
これらが組み合わさることで、「中央集権型取引所の速さ」と「分散型取引所の透明性」という、これまで両立が難しかった二つの価値を同時に実現しています。
おわりに
次回は「ハイパーリキッド(HYPE)の収益モデル ~HYPE価格を支える仕組み~」として、ハイパーリキッド(HYPE)がどのようにして収益を生み出し、その利益がHYPEトークンの価値にどうつながっているのかを書いていこうと思います。
お読みいただきありがとうざいました。