次世代DEXで注目を集めるハイパーリキッド(HYPE)⑤くりぷと知っ得情報7月22日号

クリプトスタディ(クリスタ)の水野です。
シリーズで、いま世界中のトレーダーから注目されている、ハイパーリキッド(HYPE)について、書いています。

🔶ハイパーリキッド(HYPE)の概要くりぷと知っ得情報6月24日号🔶ハイパーリキッド(HYPE)がDEX市場のトップに立つまでの軌跡
くりぷと知っ得情報7月1日号🔶ハイパーリキッド(HYPE)はなぜそこまで速いのか⁉︎
くりぷと知っ得情報7月8日号🔶ハイパーリキッド(HYPE)の収益モデルの核心
くりぷと知っ得情報7月15日号

前号は、ハイパーリキッド(HYPE)の収益モデルの核心に迫りました。
今回は、「HYPEトークンそのもの」に焦点を当て、
🔹何に使えるのか?
🔹誰にどれくらい配分されるのか?
🔹価値の源泉はどこにあるのか?
を整理していきます。

HYPEトークンの4つの役割

HYPEは単なる「投機対象のコイン」ではなく、Hyperliquidのエコシステム全体を動かす実用的なトークンです。
大きく4つの役割があります。

役割①ステーキング(ネットワークのセキュリティ)

HYPEはHyperliquidのブロックチェーンを守るために使われます。ユーザーがHYPEをステーキング(預け入れ)することで、ネットワークの安全性が維持される仕組みです。Hyperliquidは「委任型プルーフ・オブ・ステーク(dPoS:Delegated Proof of Stake)」という仕組みを採用しています。イメージでいうと「選挙制度」です。ブロックチェーンは世界中に散らばった多数のコンピューター(ノード)が協力して動いています。
その中で「この取引は正しいか?」を確認し合う役割を担うのがバリデーター(Validator:検証者)と呼ばれる参加者です。
dPoSはこのバリデーター(検証者)を選ぶ仕組みで、国会議員の選挙にたとえるとわかりやすいです。
選挙の世界dPoSの世界有権者HYPEの保有者国会議員バリデーター票を投じるHYPEを委任(ステーキング)する議員が国会で法案を審議バリデーターがブロックを承認議員報酬ステーキング報酬(年率約2.2〜2.4%)

有権者(HYPE保有者)は直接ネットワーク運営に参加する必要はなく、信頼できる議員(バリデーター)に票(HYPE)を預けるだけでOKです。
イメージでは、議員が働いた報酬の一部が有権者にも還元される仕組みです。

ステーキングしても自分のHYPEの所有権は失われません。
あくまで「貸している(ステーキング)」状態で、報酬を受け取りながら引き続き自分のものとして保有し続けられます。

Hyperliquidの場合、現在の具体的な数字は以下のとおりです。

バリデーターの数

現在約27人のアクティブセット(2026年5月に24人から拡張。将来的に50人以上へ拡大予定)(執筆時)

ブロック承認に必要な同意

全ステーク量の3分の2超(HotStuffベースのBFTコンセンサスの特性による)
BFTとは「一部の参加者が故障・不正を行っても全体として正しく動き続ける仕組み」のことで、数学的な証明により、参加者の3分の2超が賛成すれば合意が成立し、残りの3分の1未満が不正を行っても覆せない設計になっています。(参考)

ステーキング開始後のロックアップ

約1日

アンステーキング(解除)の待機期間

約7日間

役割②ガバナンス(意思決定への参加)

HYPEを保有・ステーキングすることで、プラットフォームの重要な意思決定に参加できます。

新機能の追加・手数料の変更・エコシステムへの助成金配分など、プロトコルの将来を決める提案=HIP(Hyperliquid Improvement Proposals)に投票する権利が与えられます。

投票の仕組みはシンプルです。

自分のHYPEを預けた(委任した)バリデーターが、ガバナンス提案に対して「賛成・反対・棄権」のスタンスを表明します。
その際、バリデーターが預かっているHYPEの総量が「票の重さ」になります。

株主総会にたとえると、「1株1票」と同じ仕組みです。
1,000HYPEを持つ人は1,000票分の影響力を持ち、10HYPEしか持たない人は10票分の影響力しかありません。

つまり、多くHYPEを持つほど、プラットフォームの意思決定に対する発言力が大きくなる設計です。

役割③ガス代(取引手数料の支払い)HyperEVM上でスマートコントラクトを動かす際のガス代(手数料)にHYPEが使われます。イーサリアム(ETH)のネットワーク上の操作にイーサ(ETH)が必要なのと同じイメージです。

役割④取引手数料の割引Hyperliquidの手数料割引は「2つの仕組みが組み合わさる」設計になっています。 

仕組み①ボリュームティア(取引量が多いほど安くなる)過去14日間の取引量に応じて、手数料が自動的に下がる仕組みです。ティアは全部で7段階(Tier 0〜6)あり、毎日UTC0時(※)に更新されます。(※)UTC(協定世界時)が0時のとき、日本標準時(JST)は、午前9時です。日本はUTCより9時間進んでいます。(時差計算)取引量の計算式は以下のとおりです。14日間の加重取引量 = 先物の取引量+(現物の取引量 × 2)現物取引はレバレッジをかけない分、同じ金額でも先物より取引コストが高く、プラットフォームへの貢献度が高いと判断されているため、
2倍にカウントされます。
現物取引を積極的に使うほど、ボリュームティアが上がりやすくなる仕組みです。【具体例】 14日間で「先物300万ドル+現物100万ドル」取引した場合
300万ドル+(100万ドル × 2)= 加重取引量500万ドル実際の取引量は400万ドルでも、加重計算では500万ドルとなるため、Tier 1(500万ドル以上)に到達できます。
割引率を表にまとめます。ティア14日間取引量Taker手数料(先物)Maker手数料(先物)Tier 0制限なし0.045%0.015%Tier 1500万ドル以上0.040%0.012%Tier 22,500万ドル以上0.035%0.008%Tier 31億ドル以上0.030%0.004%Tier 45億ドル以上0.028%0.000%Tier 520億ドル以上0.026%0.000%Tier 670億ドル以上0.024%0.000%※Tier 4以上はMaker手数料が無料になります。
さらにMaker取引量が多い場合は「マイナス手数料(リベート)」として逆に報酬を受け取れるケースもあります。出典:公式ドキュメント(手数料ティア詳細)
仕組み②ステーキング割引(HYPEを預けるほど安くなる)HYPE
をステーキングする量に応じて、取引手数料が最大40%割引になる「ステーキングティア制度」が設けられています。
ティアは全部で6段階です。

ティア名必要ステーキング量割引率Wood(木)10 HYPE以上5%割引Bronze(銅)100 HYPE以上10%割引Silver(銀)1,000 HYPE以上15%割引Gold(金)10,000 HYPE以上20%割引Platinum(白金)100,000 HYPE以上30%割引Diamond(ダイヤモンド)500,000 HYPE以上40%割引割引はステーキング開始直後から即座に適用されます。

2つの割引は「掛け算」で決まる

「ステーキング割引」と「ボリュームティア割引」は加算ではなく、掛け算で組み合わさります。

たとえば、Tier 1(Taker手数料0.040%)でGoldステーキング(20%割引)の場合

0.040% × 0.80 = 実効手数料0.032%

DiamondステーキングでTier 6まで到達すると

0.024% × 0.60 = 実効手数料0.0144%

これはBinance(バイナンス)やBybit(バイビット)の最上位VIPティアに匹敵する水準です。

頻繁に取引するトレーダーにとっては、HYPEをステーキングすること自体がコスト削減につながる実用的なメリットになっています。
ティア制度の詳細は公式ドキュメントで確認できます。

HYPEトークンの供給量と配分(割り当て)

HYPEの発行上限は約10億HYPE(953,814,570.29)に設定されており、それ以上は発行されません。

全体の配分を見ると、驚くべきことに70.2%がコミュニティ向けに割り当てられています。(※)

配分先

割合

枚数

将来のコミュニティ報酬

38.888%

約3億8,889万枚

ジェネシスエアドロップ(初期配布)

31.000%

約3億1,000万枚

コアコントリビューター(開発チーム)

23.800%

約2億3,800万枚

Hyperfoundation予算

6.000%

約6,000万枚

コミュニティグラント

0.300%

約300万枚

HIP-2(流動性供給)

0.012%

約12万枚

合計

100.000%

約10億枚

参照:Tokenomist(配分・アンロックスケジュール詳細)

VC(ベンチャーキャピタル)への配分がゼロである点は、業界では極めて異例です。

通常、暗号資産プロジェクトはVCから資金調達をする代わりに、トークンの一部を格安で渡します。
VCはそのトークンが上場後に値上がりしたところで売却し、大きな利益を得ます。
これがいわゆる「VCダンプ(圧力)」と呼ばれる現象で、一般ユーザーが価格下落の被害を受けることがたびたび問題になってきました。ハイパーリキッド(HYPE)はVCを一切入れていないため、この構造的な問題が存在しません。(※)コミュニティ向け合計(将来のコミュニティ報酬+ジェネシスエアドロップ+コミュニティグラント+HIP-2)=70.2%
主要な各配分先について(解説)開発チーム(コアコントリビューター:核となる貢献者)Hyperliquidを実際に開発・運営しているチームメンバーへの報酬です。
Jeff Yan(ジェフ・ヤン)をはじめとする11人の開発チームが該当します。開発チームへの配分(23.8%)については、ロックアップや、Vestingと呼ばれる仕組みで管理されています。ロックアップとは「一定期間は売れないようにする」仕掛けのことで、チームが一度に大量のトークンを売り崩すことを防ぐ設計です。
給与を毎月少しずつ受け取るイメージに近く、段階的に少しずつ解放されることで市場への急激な供給増を抑えています。また、ベスティング(Vesting)とは、役員や従業員に付与されたストックオプション(株式購入権)や株式の権利を、一定期間の条件を満たすことで「確定」させる仕組みになります。
直近では2026年8月6日にコアコントリビューター(開発チーム)向けのアンロック(ロック解除)が予定されています。
一度に大量売却はできない設計ですが、このタイミングは価格に影響を与える可能性があるため、意識しておきたいポイントです。

Hyper Foundation予算(6.00%)

Hyperliquidの普及・啓発活動や、エコシステム全体の発展を支援するための運営資金です。
イベントの開催、開発者支援、マーケティング、法務対応など、プロジェクト全体を長期的に維持・成長させるために使われます。
「会社の運営費」に相当するイメージです。 Community Grant(コミュニティグラント:0.30%)「コミュニティグラント(Community Grant)」とは、共通の目的を持つコミュニティの活動を支援するために支給する「支援金」の意味です。
ここでは、Hyperliquidのエコシステムに貢献した個人や団体に対して贈られる支援金です。
新しいツールを開発した開発者、教育コンテンツを作ったクリエイター、コミュニティ活動に貢献したメンバーなどが対象になります。
割合は小さいですが、「コミュニティの力で育てる」というハイパーリキッド(HYPE)の哲学を体現した配分といえます。

ステーキングで得られる報酬

HYPEをステーキングすると、報酬として新たなHYPEを受け取れます。
現在の利回りは年率約2.2〜2.4%(APY)で、報酬は自動的に再ステーキングされる複利設計になっています。ステーキングの手順はシンプルです。
HYPEをスポットバランスに保有し、それをステーキングバランスに移し、好みのバリデーターに委任するだけです。報酬は毎分積み上がり、毎日自動で配布・再投資されます。(参考)ただし注意点もあります。
委任(ステーキング開始)から約1日のロックアップが発生し、解除(アンステーキング)には約7日間の待機期間(キュー)があります。
つまり「すぐに売りたい」と思っても7日間は動かせない点があります。他にも、HYPEをステーキングできる中央集権型取引所、バリデータ経由プラットフォームもありますが、ここでは割愛します。

HIPとガバナンスの仕組み

第1回でも触れたHIP(Hyperliquid Improvement Proposals)について、ここで詳しく解説します。HIPとは「ハイパーリキッド(HYPE)をどう改善・変更するかをコミュニティが提案し、投票で決める制度」です。
イーサリアム(ETH)のEIP(Ethereum Improvement Proposals:改善提案)に近いイメージで、プラットフォームの重要な変更はすべてこの仕組みを通じて決定されます。これまでに実施された主なHIPの例を見ると、その影響の大きさがわかります。整理しておきます。

HIP番号

内容

時期

HIP-1

ネイティブトークン標準の導入・オンチェーンスポット市場の開設

2024年初

HIP-2

スポット資産の自動流動性供給の追加

2024年

HIP-3

誰でもパーペチュアル市場を開設できる「Builder-Deployed Perps」の導入

2025年10月

HIP-4

予測市場(Outcome Markets)の導入

2026年5月

バリデーター投票(HIP番号なし)

Assistance Fundに蓄積された約3,720万HYPEを永久焼却として正式認定

2025年12月

HYPEの価値はどこから来るのか?

最後に、「HYPEの価値の源泉」を整理します。

HYPEの価値は主に以下の4つのメカニズムから生まれています。

①バイバック・バーンによるデフレ圧力

第4回で詳しく解説したとおり、取引手数料の約97%が自動的にHYPEのバイバック(買い戻し)とバーン(焼却)に充てられます。
取引量が増えるほどHYPEが市場から消えていく、デフレ型のトークン設計です。

②ステーキングによる流通量の減少

ステーキングされているHYPEは市場で売却できないため、実質的な流通量が減ります。
ステーキング報酬として新たなHYPEが発行される一方、ステーキングによって市場から引き上げられるHYPEの量が上回れば、全体としてデフレ圧力が働きます。

③HIP-3デプロイヤーによる需要

前号で書いたように、新しい永久先物取引(Perpetual:パーペチュアル、永久先物 )市場を開設するために50万HYPEのステーキングが必要であることから、デプロイヤー(開設者)が市場からHYPEを買い続ける需要が生まれます。
2026年6月時点でHIP-3市場(「誰でも自由にパーペチュアル取引市場を作れる仕組み)のオープンインタレスト(建玉残高=未決済のまま残っている契約の総数)は30億ドルを超えており、複数のデプロイヤーがそれぞれ50万HYPEを担保に入れていることになります。(参考)

④機関投資家・ETFからの需要

2026年5月27日に、米国でHYPE現物ETFが上場し、Bitwiseの「BHYP」とその報酬の一部を自動的にHYPEの買い付けに充てる仕組みが注目されています。

機関投資家マネーの本格的な流入がHYPEの需要を底上げしています。

まとめ

HYPEトークンが持つ意味として、「買って値上がりを待つ」だけのトークンではありません。

ステーキングすればネットワークを守りながら報酬を受け取れ、ガバナンスに参加することでプラットフォームの将来を自分たちで決められ、大量保有すれば取引コストも下がる、多層的な価値設計になっています。

そしてその価値の根底にあるのは、Hyperliquidという取引所が実際に使われ、手数料を生み続けるという「実需」です。
「使われるから価値が上がる」という好循環が、HYPEを他の多くのガバナンストークンと一線を画す存在にしています。

おわりに

次回の第6回は、HyperliquidとBinance(バイナンス)の違い ~次世代取引所はDEXなのか?~」として、中央集権型取引所の王者Binance(バイナンス)と、Hyperliquidを徹底比較してみようと思います。
今回も、お読みいただきありがとうございました。