次世代DEXで注目を集めるハイパーリキッド(HYPE)⑨くりぷと知っ得情報8月19日号

クリプトスタディ(クリスタ)の水野です。
シリーズで、いま世界中のトレーダーから注目されている、ハイパーリキッド(HYPE)について、書いています。
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くりぷと知っ得情報7月8日号🔶ハイパーリキッド(HYPE)の収益モデルの核心
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くりぷと知っ得情報8月5日号🔶伝統的金融資産の24時間取引市場に進出するHyperliquid
くりぷと知っ得情報8月12日号
前号では、Hyperliquidが株式・金・為替といった伝統的金融資産の24時間取引市場に本格進出している状況をお伝えしました。
今回は、DEX市場におけるHyperliquidとそのライバルを分析していこうと思います。
「なぜHyperliquidがここまで圧倒的なシェアを持つのか」を、ライバルとの比較をしていきましょう。
DEXパーペチュアル市場の現状
2026年、分散型パーペチュアル先物市場は週間取引量400億ドル(6兆5,200億円)以上を処理するまでに成長しました。
かつては「DeFiの実験的な試み」と呼ばれていた市場が、いまや中央集権型取引所と真剣に競合するほどの規模になっています。
その中心にいるのがHyperliquidです。
Hyperliquidの分散型パーペチュアルDEX市場全体の取引量に占めるは、2026年1月の36.4%から3月には約44%へと上昇しており、市場が拡大する中でシェアを伸ばした唯一の主要DEXとなっています。
概略を表にまとめてみました。(出典:PERP.WIKI)
プラットフォーム | 月間取引量 | TVL(総預かり資産) | データ出典 |
|---|---|---|---|
Hyperliquid(約44%) | 約2,080億ドル(2026年3月) | 約62億ドル | |
Aster(約21%) | 約527億ドル(月間) | 約7億7,172万ドル | |
dYdX(約3%) | 約250〜300億ドル(2026年3月) | 約3億5,000万ドル | |
GMX(約3%以下) | 約4,400万ドル(月間) | 約1億5,200万ドル(2026年5月) | |
Jupiter(約3%以下) | 約930億ドル(月間・アグリゲーター含む) | 約25億ドル(エコシステム全体) |
Hyperliquidのライバルを掘下げる
2026年の永久先物取引(Perpetual:パーペチュアル)DEX市場は、かつてないほど競争が激化しています。
トレーダーは、様々なチェーン、執行モデル、手数料体系、そしてエコシステムの規模において、真の選択肢を持つようになりました。
ここからは、HyperliquidのライバルDEXについて、比較していきます。
①新興ライバル:Aster(アスター)
まずは、タイトル通り、「新興」のDEX「Aster」です。
AsterはAstherus(アスセラス)とAPX Finance(エーピーエックス・ファイナンス)の合併によって2024年末に誕生した分散型パーペチュアル取引所です。
Astherusという利回り商品とAPX Financeの高性能パーペチュアルインフラを統合した、スポット取引・パーペチュアル先物・イールドファーミング(流動性提供だけでなく、レンディング(貸付)や、もらった報酬を別の高い利回りのプールに預け直すなど、利益を最大化する一連の運用)を一体化したDeFiエコシステムです。
整理します。
Astherus(アスセラス)とは
Binance Labs(現YZi Labs)が支援する利回りプロトコルです。(参考)
ユーザーが資産を預けると、デルタニュートラル戦略という、ポートフォリオ全体のデルタ値(価格感応度)をゼロにし、価格変動リスクを相殺する運用手法で自動運用され、収益が還元されます。
銀行の定期預金に近いイメージですが、ブロックチェーン上で自動的に運用される点で、「預けておくだけでお金が増える」仕組み、資本効率の高さが強みで、独自の利回り付きステーブルコイン「USDF」や、asBNB・asBTC(※)などの利回り付き資産を発行していて、これらをAster上の取引証拠金としてそのまま使える点が特徴です。
(出典:BitKan)
(※)USDFは、公式名称をFalcon USDとし、分散型金融の効率性と従来の価格安定性を結びつけるために設計された合成的で過剰担保されたデジタルドルです。
asBNBは、暗号資産プラットフォーム「Aster(旧Astherus)」が提供する流動性ステーキングトークンで、asBTCは、ビットコイン(BTC)の預け入れによって発行される利回り型の流動性ステーキングトークンです。
いずれも、世界最大の暗号資産取引所、Binance(バイナンス)独自のBNBチェーン上の暗号資産です。
APX Finance(エーピーエックス・ファイナンス)とは
2021年にApolloX(アポロエックス)としてBNB Chain上でローンチし、2023年にAPX Financeへリブランドした暗号資産デリバティブ(金融派生商品)専門のDEXです。
最大1001倍のレバレッジ・オーダーブックとオンチェーンのハイブリッド取引方式・開発者が許可なく独自DEXを構築できるパーミッションレスエンジン(※)が主な特徴です。
2024年12月時点で累積取引量3,270億ドルを達成していました。
(出典:Gate Learn・APX公式ドキュメント)
(※)パーミションとは、「権限」「許可」そいった意味で、パーミションレスとは、管理者の許可や承認なしに、誰でも自由に参加、利用、取引ができるシステムやネットワークのことです。
2社が合併してAsterになった経緯
2社の合併は「弱点の相互補完」が目的でした。
Astherusは利回り商品の設計には優れていましたが、取引インフラが弱いと言う側面がありました。
一方APX Financeは、高速・高レバレッジの取引インフラを持っていましたが、「預けた担保をそのまま寝かせておくだけ」という設計で、担保から利益を生み出す仕組みがありませんでした。
この2社が合わさることで「取引しながら利回りも得られる」という、DeFiでは珍しい一体型プラットフォームが生まれました。
さらに2025年11月2日にはBinance創業者のChangpeng Zhao(CZ:チャンポン・ジャオ:趙長鹏)氏が200万Asterトークンを購入したことが報じられ、価格が20%急騰し、一気に注目度が高まりました。
まとめます。
項目 | 内容 |
|---|---|
設立 | 2021年(ApolloXとして) |
リブランド | 2023年(APX Financeへ) |
特徴 | 最大1001倍という高レバレッジ |
累積取引量 | 約3,270億ドル(2024年12月時点) |
合併 |
Aster(アスター)が短期間で台頭してきた背景
①Binanceの支援という強力な後ろ盾
AsterはBinance(バイナンス)の支援を受けていて、Binanceへの上場と同時に知名度が一気に上がりました。
Binanceユーザーへのアクセスという点で、他のDEXにはない強力な普及経路を持っています。(参考)
②1001倍という圧倒的なレバレッジ
Hyperliquidの最大50倍に対し、Asterはシンプルモードで最大1001倍のレバレッジを提供しており、高レバレッジを好むリテール(個人投資家)トレーダーを強力に引き付けました。(参考)
③マルチチェーン対応という間口の広さ
Asterは、バイナンス(BNB)チェーン、イーサリアム(ETH)チェーン、ソラナ(SOL)チェーン、アービトラム(ARB)チェーンの4チェーンに対応しており、既存のウォレットやDeFi環境からブリッジなしで参入できます。
一方、Hyperliquidが独自チェーンへの入金にアービトラム(ARB)ブリッジが必要なのに対し、Asterはユーザーが慣れ親しんだチェーンからそのまま使えます。(参考)
④初心者にも使いやすいUI設計
「シンプルモード」はワンクリックで高レバレッジのポジションを建てられる設計で、DeFiに不慣れなユーザーでも直感的に使えます。
一方「プロモード」はオーダーブック形式の本格的な取引ツールを提供しており、初心者からプロまで幅広いユーザー層を取り込んでいます。(参考)
⑤積極的なインセンティブキャンペーン
2025年10月にBinance上場と「Rocket Launch」キャンペーンを同時に実施したことで、パーペチュアル取引量が1ヶ月で8倍に急増しました。
ポイントプログラムやエアドロップ期待も重なり、口コミによる急速な拡大につながりました。 (参考)
比較項目 | Hyperliquid | Aster |
|---|---|---|
ブロックチェーン | 独自L1(HyperBFT) | マルチチェーン(BNB・ETH・SOL・ARB)+独自Aster Chain |
取引速度 | 毎秒20万件・平均0.2秒 | 毎秒10万件・0.05秒(Aster Chain) |
ガス代 | 取引はゼロ | Aster Chain上はゼロ |
Maker手数料 | 0.015% | 0.005%(Hyperliquidの約3分の1) |
Taker手数料 | 0.045% | 0.010〜0.080%(モードによる) |
レバレッジ上限 | 最大50倍 | 最大1001倍(シンプルモード) |
KYC | 不要 | 不要 |
取引モード | プロ向け(オーダーブック) | シンプル(ワンクリック)+プロ(オーダーブック)の2モード |
プライバシー機能 | なし | あり(隠し注文・Shield Mode) |
伝統的資産取引 | あり(HIP-3) | あり(株式・ETF先物) |
バッキング | VC不在・自己資金 | Binanceが支援 |
トークン | HYPE(バイバック・バーン) | Aster(手数料割引・ステーキング報酬) |
出典:Coin Bureau・KuCoin・forex.quebec
一方で‥‥
Asterの課題(リスク)
Asterには以下の課題も指摘されています。
①インセンティブ依存の成長
「インセンティブが終わった後もユーザーが残るかどうか」がAsterにとっての最大の課題です。
Hyperliquidが有機的な取引需要で成長してきた一方、Asterの急成長はキャンペーンと高レバレッジへの投機的な需要に依存している面があります。(参考)
②Binance依存というリスク
支援を受けているBinanceとの関係は強みである一方、「完全に分散型か」という観点では疑問符がつきます。
HyperliquidのVC不在・コミュニティ主導という設計思想とは対照的です。
③高レバレッジによる清算リスク
最大1001倍というレバレッジは初心者には非常に危険で、市場が少し動いただけで全額清算されるリスクがあり、リスク管理の知識が必須です。
②dYdX(ディーワイディーエックス)
次に、dYdXを見てみましょう。
dYdXは、2021年にイーサリアム(ETH)上でローンチした、オンチェーンパーペチュアル先物取引の先駆者です。
かつては「DEXパーペチュアルの王者」と呼ばれ、2023年初頭には全DEXパーペチュアル出来高の約73%を占めていました。
しかし2026年初頭には、一桁台のシェアまで転落しており、DEX史上最もドラマチックな市場シェアの崩壊の一つとして語られています。
dYdXの技術的特徴
dYdXは2023年後半に、独自のブロックチェーン(dYdX Chain v4)を構築し、そちらに移行しました。
この点はHyperliquidと似ていますが、大きな違いがあります。
Hyperliquidは注文の受付から約定・記録まですべてをブロックチェーン上で処理しますが、dYdXは注文の照合(マッチング)をブロックチェーンの外(オフチェーン、バリデーターのサーバー上)で行い、最終的な決済だけをブロックチェーン上で処理するという、「ハイブリッド方式」を採用しています。
透明性という点では、Hyperliquidに軍配が上がります。
すべての注文・約定・キャンセルがブロックチェーン上に記録されるHyperliquidに対し、dYdXは注文の照合プロセスが外からは見えないため、「本当に公平に処理されているか」を第三者が検証しにくい構造になっています。
比較項目HyperliquiddYdXブロックチェーン独自L1(HyperBFT)Cosmos独自チェーン(v4)(※)オーダーブック完全オンチェーンオフチェーンとのハイブリッド月間取引量約2,080億ドル約250〜300億ドルTVL約62億ドル約3億5,000万ドルTaker手数料0.045%0.050%Maker手数料0.015%0.020%レバレッジ上限最大50倍最大100倍KYC不要不要トークンHYPE(バイバック・バーン)DYDX(手数料の100%をステーカーに分配)
(出典:buildix)
(※)Cosmos SDK(コスモスSDK)とは、独自ブロックチェーンを比較的簡単に構築できる「ブロックチェーン開発のためのフレームワーク(枠組み)」です。
dYdX Chain v4はこのCosmos SDKを使って構築されており、2023年10月26日にメインネットが稼働を開始しました。
dYdXの強みと弱み
dYdXの強み
🔶長い運営実績2017年設立の老舗DEXとして、新興プラットフォームにはない信頼感があります。
🔶高いレバレッジ(最大100倍)Hyperliquidの最大50倍に対し、より大きなポジションを少ない資金で持てます。ただし損失も拡大するため上級者向けです。
🔶完全オープンソースすべてのコードが公開されており、世界中の開発者が中身を自由に検証・改良できます。
🔶DYDXステーカーへの手数料100%分配プラットフォームで発生した取引手数料の100%がdYdXのステーカーに直接分配されます。「取引所の収益をユーザーで山分けする」イメージです。
dYdXの弱み
🔶取引速度が遅いdYdX Chain v4の平均ブロック時間は約1秒で、Hyperliquidの平均0.2秒と比べると5倍の差があります。
マーケットが急変動する局面では、この速度差が約定価格に大きく影響します。
🔶オーダーブックがオフチェーンのため透明性が低い注文の照合(マッチング)がバリデーターのサーバー上で行われるため、「本当に公平な順番で処理されているか」を第三者が検証しにくい構造です。
Hyperliquidはすべての注文・約定・キャンセルがブロックチェーン上に記録されており、誰でも確認できるのとは対照的です。
🔶市場シェアが急速に縮小かつてはDEXパーペチュアル市場の約73%を占めていたdYdXですが、2026年時点では3%以下に転落しています。
Hyperliquidの台頭によって主要ユーザーが移行したことが主な原因です。
「かつての王者」から「挑戦者」へと立場が逆転した形です。
③GMX(ジーエムエックス)
GMXは、 アービトラム(ARB)、アバランチ(AVAX)ブロックチェーン上で動作するパーペチュアル先物取引所です。
「リアルイールド(Real Yield)」という概念を広めたプロジェクトとして知られており、GLP(GMX Liquidity Pool:流動性プール)に資金を預けるとプラットフォームの取引手数料から安定した利回りが得られる仕組みが特徴です。
GMXはこの「実際の手数料収入から利回りを出す」という仕組みを2022年頃に打ち出し、当時の暗号資産業界で大きな注目を集めました。現在ではHyperliquidのバイバック・バーンモデルも広い意味で「リアルイールド」の一形態といえます。
後述のJupiterと同様、オラクルAMM方式を採用しており、大口取引でも「ゼロスリッページ」での取引が可能なのが特徴です。(※)
オラクルとは「外部の価格情報をブロックチェーンに取り込む仕組み」のことで、たとえばビットコイン(BTC)の現在価格をリアルタイムで取得して、取引の基準価格として使います。
AMM(Automated Market Maker:自動マーケットメイカー)とは、売り手と買い手を直接マッチングするのではなく、流動性プール(資金の貯蔵庫)を相手に自動で取引する仕組みのことです。
つまり、
オラクルAMM方式とは、
「外部から取得したリアルタイム価格を基準に、流動性プールと自動で取引する方式」
です。
(※)ゼロスリッページとは、注文時の希望価格と実際に売買が成立する価格のズレ(スリッページ)が「ゼロ」である状態や、その取引メカニズムのことです。
現在、GMXのTVL(Total Value Locked:DeFiプロトコルに預けられている暗号資産総額)は、Hyperliquidの約40分の1まで縮小しており、市場シェアも急速に低下しています。
④Jupiter(ジュピター)
Jupiterは、ソラナ(SOL)ブロックチェーン上で動作するDEX(分散型取引所)です。
パーペチュアル先物取引に加え、ソラナ(SOL)上の複数のDEXをまとめて最良価格で取引できる「アグリゲーター機能」(※)が最大の特徴です。
取引方式はオーダーブックではなく、JLP(Jupiter Liquidity Provider:流動性プール)を相手に取引するオラクルAMM方式を採用しています。
注文板が存在しないためプロトレーダーには不向きですが、ソラナ(SOL)エコシステムに慣れ親しんだDeFiユーザーには使いやすい設計です。
ただしソラナ(SOL)のネットワーク障害リスクに依存している点と、Hyperliquidと比べて取引量が大幅に少ない点が弱点です。
(※)DEXアグリゲーターとは、複数の分散型取引所からの注文データ、価格情報、流動性プールを統合し、ユーザーが最適な取引経路を最短時間で見つけるのを支援する機能です。
オーダーブック方式(Hyperliquid)オラクルAMM方式(GMX・Jupiter)取引の相手他のトレーダー流動性プール価格の決まり方売り手・買い手の注文で決まる外部オラクルの価格を参照スリッページ発生する場合ありゼロ(基準価格で約定)プロトレーダー向け向いているやや不向き
おわりに
2023年まで「DEXパーペチュアルの王者」だったdYdXが3%以下のシェアに転落し、Hyperliquidが44%以上を占めるという現実は、プロダクトの質・速度・手数料・コミュニティへの還元という4つの要素が重なった結果です。
ただしDEX市場は変化のスピードが速く、Asterのような新興プレイヤーの台頭や、ウォール街の参入による競合増加が今後の勢力図を変える可能性もあります。
Hyperliquidの「一強」が続くかどうかは、技術革新とコミュニティへの還元を継続できるかにかかっています。
次回は「ハイパーリキッド(HYPE)の将来性を考察 ~2027年に向けて何が期待されるのか~」として、ETF申請・機関投資家の関心・価格予測など、HYPEの未来を多角的に分析したいと思います。
今回も、お読みいただきありがとうございました。