次世代DEXで注目を集めるハイパーリキッド(HYPE)⑪くりぷと知っ得情報9月2日号

クリプトスタディ(クリスタ)の水野です。
シリーズで、いま世界中のトレーダーから注目されている、ハイパーリキッド(HYPE)について、書いています。
🔶ハイパーリキッド(HYPE)の概要くりぷと知っ得情報6月24日号🔶ハイパーリキッド(HYPE)がDEX市場のトップに立つまでの軌跡
くりぷと知っ得情報7月1日号🔶ハイパーリキッド(HYPE)はなぜそこまで速いのか⁉︎
くりぷと知っ得情報7月8日号🔶ハイパーリキッド(HYPE)の収益モデルの核心
くりぷと知っ得情報7月15日号🔶ハイパーリキッド(HYPE)のトークンの使い道と価値の源泉
くりぷと知っ得情報7月22日号🔶HyperliquidはBinance(バイナンス)の代わりになれるのか?くりぷと知っ得情報7月29日号🔶「HYPEジェネシスエアドロップ」の全貌
くりぷと知っ得情報8月5日号🔶伝統的金融資産の24時間取引市場に進出するHyperliquid
くりぷと知っ得情報8月12日号🔶Hyperliquidとライバルたちとの比較くりぷと知っ得情報8月19日号🔶HYPEは2027年に向けてどこへ向かうのか
くりぷと知っ得情報8月26日号
前号では、視点を未来に向けて、「HYPEは2027年に向けてどこへ向かうのか」を多角的に考察してみました。
前号で、8月23日の最高値をお伝えしましたが、8月27日に86.84ドルと、さらに最高値を更新しましたね。
今後が楽しみです。
今回は、ハイパーリキッド(HYPE)の大きな可能性の一方、無視できない「5つのリスク」について、考察してみようと思います。
①トークンアンロックによる売り圧力
HYPEの総発行上限は約10億枚ですが、2026年8月時点の流通供給量は約2億5,300万枚(全体の約25.3%)にすぎません。
残りの約75%は、今後数年かけて段階的に解放されます。
コアコントリビューター(開発チーム)向けに毎月約120万枚が解放されており、これが継続的な売り圧力の源となっています。
8月29日には、Hyperliquid史上最大規模の月次アンロックとして、アンロックが実施されました。
日付 | 枚数 | 対象 | 実際の請求額 |
|---|---|---|---|
8月6日(済) | 約992万枚 | コアコントリビューターのみ | 約2,265万ドル(予定の約3.6%) |
8月29日(済) | 約1,417万枚 | コミュニティ・インサイダー・財団の3グループ | 2024年11月のローンチ以来最大規模 |
9月6日(直近) | 約992万枚 | コアコントリビューター | 約7億9,700万ドル相当(予定) |
9月29日(次回) | 約1,417万枚 | コミュニティ・インサイダー・財団の3グループ | 時価総額の2.7%相当(予定) |
また、直近では、コアコントリビューター向け(約992万枚)のアンロックが、9月6日に実施される予定です。(参考)
8月6日のアンロックは市場が3週間にわたって約6億2,000万ドルのイベントとして警戒していましたが、実際の請求額は約2,265万ドルにとどまり、翌日HYPEは0.7%上昇しました。
一方で、8月29日のアンロックはインサイダーへの配分が46.6%(約5億6,000万ドル相当)を占めており、市場では大きな売り圧力が懸念されていました。
しかし実際には、8月27日に新たな史上最高値86.71ドルを更新し、アンロック実施日(8月29日)の下落も、前日比約2.3%(約81.25ドル)にとどまりました。
バイバック・機関投資家の買い・ETFの需要が新規供給を吸収した形で、「暴落」ではなく「小幅な調整」という結果でした。(出典:CryptoTimes、Decrypt)
なお過去のアンロック後の価格推移は、5月=-14.1%、6月=+1%、7月=-7%と、混在しており、アンロックが必ずしも大幅下落につながるわけではないことを示しています。
アンロックスケジュール
アンロックスケジュールはCoinGlass、Tokenomics.com、DropsTabなどのサイトで、リアルタイムに確認できます。
次回アンロック日・枚数・時価総額に対する割合を一目で把握できます。
Assistance Fund(アシスタンスファンド)のバイバックが、この売り圧力を吸収できるかどうかが、今後のHYPE価格を左右する重要な要因といえますが、一方で売り圧力を相殺する新しい動きも始まっています。
なお、2026年8月26日、HyperliquidはUSDCの準備金運用益をHYPEの買い戻し・焼却に充てる新制度「AQAv2」の運用益計上を開始しました。(出典:CoinPost)
仕組みはシンプルで、Hyperliquid上に存在するUSDC(約50億〜55億ドル規模:約8,800億円)の準備金運用益の約90%が自動的にAssistance Fund(アシスタンスファンド)に送金され、HYPEの買い戻し・焼却に充てられます。
初回の送金は2026年10月3日に予定されており、市場試算では年間1億3,500万〜1億6,000万ドル規模の新たな買い戻し原資が加わると見込まれています。
これにより、従来の取引手数料由来のバイバックに加え、USDCの預かり残高に連動した新たな買い戻し経路が稼働したことになります。アンロックによる売り圧力をこの新制度がどこまで吸収できるかが、今後のHYPE価格を左右する注目ポイントです。

②規制リスクと米国ユーザーのジオブロック
現在HyperliquidはKYC(本人確認)なしで使えますが、その代わりに米国居住者のアクセスをジオブロック(地理的アクセス制限)しています。
世界最大の金融市場である米国のユーザーが参加できない状態は、取引量・収益・HYPEの需要拡大の大きな制約になっています。
ETF資金流入の鈍化
前号でも書きましたが、JPモルガン・チェースは、2026年8月に「HYPEのETFへの資金流入が2026年7〜8月に大幅に鈍化した」と警告しました。
5〜6月の急騰後の利益確定売りと市場全体の調整が主因とされています。(出典:CoinDesk)
規制対応済み競合の台頭
また、Kalshi(カルシ)、Coinbase(コインベース)、Kraken(クラーケン)など規制対応済みの競合取引所が米国市場でパーペチュアル先物を提供し始めたことで、現在米国ユーザーをジオブロックしているHyperliquidから取引量が流出するリスクも高まっています。
取引量が減少すると手数料収入が減り、HYPEのバイバック、バーンが弱まるという連鎖につながります。
具体的には以下の3社が米国市場でパーペチュアル先物を提供し始めています。
2026年5月にCFTCがBTCPERPを承認。HYPEパーペチュアル先物まで上場させており、「Hyperliquidが米国ユーザーに提供できないサービスをKalshiが合法的に提供している」という状況が生まれています。 | |
CFTCのノーアクション・リリーフ(規制執行猶予)を受け、機関投資家向けのパーペチュアル類似商品を提供。規制対応という点でHyperliquidに対して明確な優位性を持っています。(※) | |
CFTC登録済みのBitnomialと提携し、機関投資家向けに規制対応済みのパーペチュアル先物を提供する計画を発表しています。 |
(※)一方で2026年8月19日には、CoinbaseのBase AppがHyperliquidのパーペチュアル先物取引を採用し、米国・英国・カナダを除く世界中のユーザーに提供を開始しました(出典:Finance Magnates)。CoinbaseはHyperliquidの競合でありながら、同時にHyperliquidが「エンジン」、Base Appが「ハンドル」を担うパートナーでもある関係性です。
規制対応への動き
2026年8月19日、トランプ大統領が「CFTC(Commodity Futures Trading Commission:米国商品先物取引委員会)がHyperliquidを合法的な形で米国に持ち込む作業を進めている」と公式に発言しました。(出典: CoinDesk)
しかし米国への完全参入にはKYC認証の導入、レバレッジ制限など、現在の強みの一部を犠牲にする可能性があります。
さらに、米国シカゴの世界最大の先物取引所「シカゴ・マーカンタイル取引所(CME:Chicago Mercantile Exchange)グループがCFTCを提訴するなど、既存取引所からの抵抗も強く、実現には時間がかかる見通しです。(出典:Blockonomi)
③スマートコントラクトと技術的リスク
「分散型だから安全」と言われますが、技術的なリスクは依然として存在します。
スマートコントラクトの脆弱性
Hyperliquid公式ドキュメントも「スマートコントラクトのバグや脆弱性によってユーザーの資金が失われる可能性がある」と明記しており、ハイパーリキッド(HYPE)はイーサリアム(ETH)ほど広範なテストや精査を受けていない独自L1上で動作しています。(出典:公式リスクページ)
またHyperEVM(スマートコントラクト環境)とHyperCore(高性能取引エンジンの)の間には明確な信頼境界線(trust boundary:トラストバウンダリー)=どこまでを信頼できる領域とし、どこからを信頼しない前提で扱うか?が存在しており、「HyperEVMで動くアプリのコード自体に問題がなくても、以下の4つの場面でリスクが潜む可能性があると、セキュリティ監査会社「QuillAudits」が指摘しています。
①注文フロー大量の注文が殺到した際に、アプリが想定した順番通りに処理されない可能性があります。
②清算タイミング担保不足のポジションが強制清算される瞬間に、アプリ側の処理が追いつかず誤動作する可能性があります。
③オラクル(価格フィード)の想定のずれアプリが参照する外部の価格データが実際の市場価格と一時的にずれた場合、誤った判断をしてしまう可能性があります。
④HyperCoreとHyperEVMの橋渡し取引エンジン(HyperCore)とアプリ環境(HyperEVM)は別々の処理系で動いており、その間でデータをやり取りする際に予期しない不整合が生まれる可能性があります。
実際にHyperEVM上のサードパーティプロトコル「Hyperdrive」が2025年9月に約78万2,000ドルの被害を受けました。
サードパーティプロトコルとは、Hyperliquid本体とは別の独立した開発チームがHyperEVM上に構築したアプリのことです。Hyperliquidが「土地(インフラ)」を提供し、外部の開発者がその上に「建物(アプリ)」を建てるイメージです。
「Hyperdrive」はその代表例で、HyperEVM上に構築されたレンディング(貸し借り)プロトコルです。
USDCなどのステーブルコインを預けて利回りを得たり、ビットコイン(BTC)、ハイパーリキッド(HYPE)、PURR(※)などを担保にUSDCを借りることができます。
2025年9月に約78万2,000ドルの被害を受けた事例は、Hyperliquid本体ではなくHyperdrive側のコードの脆弱性が原因でした。
つまりHyperliquid本体は安全でも、その上で動くサードパーティアプリ固有のリスクは別途存在するという点が重要です。
(出典:HyperAcademy)
(※)PURR(パー)は、Hyperliquidが2024年4月に実施した初のエアドロップで配布したミームコインです。
オラクル操作リスク
オラクル(Oracle)とは、ブロックチェーンの外にある「現実世界の価格データ」をブロックチェーン上に届ける仕組みのことですが、価格データにずれが生じると、誤った強制清算(ロスカット)や不正確な残高計算につながる可能性があります。
JELLYJELLY事件(2025年3月)の教訓
流動性が少ない銘柄を狙った協調的な市場操作によって清算エンジンが極限まで試された事例で、「プロトコルの清算設計がエッジケース(極端な状況)でも機能するか」、というリスクが現実のものであることを示しました。(出典:CryptoAdventure)(参考)
バリデーターの集中リスク
現在のアクティブバリデーター数は約27人という少数です。緊急時の意思決定が中央集権的になりやすいという批判もあり、2027年に向けて50人以上への拡大が計画されていますが、現時点ではまだ発展途上です。
④競合プラットフォームの台頭
現在約44%のシェアを持つHyperliquidですが、この優位性は永続的ではありません。
Aster(Binance支援・最大1001倍レバレッジ)、dYdX、GMX、Jupiterといった既存競合に加え、前述のKalshi(カルシ)、Coinbase(コインベース)、Kraken(クラーケン)など規制対応済みの取引所が米国市場に参入しつつあります。
BitMEX(※)創業者のArthur Hayes(アーサー・ヘイズ)氏は「Hyperliquidが、ウォール街やBinance(バイナンス)などの大手取引所のパーペチュアル先物市場のシェアを狙っている」と発信するなど、伝統的金融業界とHyperliquidの距離は急速に縮まっています。(出典:Decrypt)
(※)BitMEXは2026年9月23日に正式に閉鎖される予定です。
⑤HYPEの価格変動リスクと集中リスク
HYPEはローンチ価格2ドルから史上最高値86.84ドル(2026年8月27日)まで約43倍に上昇しました。しかしこの間、急落も繰り返しています。
時期出来事価格変動2024年11月ジェネシスエアドロップ2ドル→9.8ドル(約5倍)2025年3月JELLYJELLY事件急落(最大30%超)2026年6月16日史上最高値(第1回)76.85ドル2026年7〜8月ETF流入鈍化・アンロック懸念76.85ドル→約58ドル(約25%下落)2026年8月19日トランプ発言急騰(最大41%)2026年8月27日史上最高値(第2回)86.84ドル収益モデルへの依存HYPEの価値はHyperliquidの取引量・手数料収入・バイバックの3要素に強く依存しています。市場全体が下落して取引量が減少すると、バイバックが減少しHYPEへの買い圧力が弱まるという連鎖が起きます。
キーパーソンリスクハイパーリキッド(HYPE)の開発・運営はJeff Yan(ジェフ・ヤン)氏を中心とするわずか11人のチームが担っています。特定の人物や少人数チームへの依存度が高いため、チームに問題が発生した場合にプロジェクト全体が打撃を受けるリスクがあります。
保有形態によってリスクは変わる⁉︎
以上、5つのリスクについては、保有形態に対して、すべてに等しく適用されるわけではありません。
HYPEの現物保有の場合、スマートコントラクトの脆弱性・規制リスク・競合リスクの影響は限定的で、実質的に「価格変動リスク」と「トークンアンロックによる売り圧力」が主なリスクになります。
また、HLP(Hyperliquidity Provider:ハイパーリクイディティ・プロバイダー)や、Uniswap(ユニスワップ)などを使った流動性提供の場合は市場急変動時の損失リスク(インパーマネントロス)が加わりますが、レバレッジをかけていないため、預けた金額以上の損失は発生しません。
通常の市場環境下では手数料収入から安定した利回りを得られる設計です。
レバレッジ取引は最もリスクが高く、5つのリスクすべてが直撃します。市場が少し動いただけで強制清算(ロスカット)になる可能性があり、上級者向けの取引形態です。
まとめ/リスクを知ることが最大のリスク管理
Hyperliquidは間違いなく革新的なプラットフォームであり、HYPEは強力なトークノミクスを持っています。しかしそれは「リスクがない」ということを意味しません。
5つのリスクを正確に理解したうえで「投資する価値があるか」を自分自身で判断することが、最大のリスク管理です。

おわりに
最終回となる第12回は「HYPEの未来を総点検~Hyperliquidの未来を支える5つの柱」として、シリーズ全体を総まとめしようと思います。
お読みいただいてありがとうございました。