次世代DEXで注目を集めるハイパーリキッド(HYPE)⑧くりぷと知っ得情報8月12日号

クリプトスタディ(クリスタ)の水野です。
シリーズで、いま世界中のトレーダーから注目されている、ハイパーリキッド(HYPE)について、書いています。
🔶ハイパーリキッド(HYPE)の概要くりぷと知っ得情報6月24日号🔶ハイパーリキッド(HYPE)がDEX市場のトップに立つまでの軌跡
くりぷと知っ得情報7月1日号🔶ハイパーリキッド(HYPE)はなぜそこまで速いのか⁉︎
くりぷと知っ得情報7月8日号🔶ハイパーリキッド(HYPE)の収益モデルの核心
くりぷと知っ得情報7月15日号🔶ハイパーリキッド(HYPE)のトークンの使い道と価値の源泉
くりぷと知っ得情報7月22日号🔶HyperliquidはBinance(バイナンス)の代わりになれるのか?くりぷと知っ得情報7月29日号🔶「HYPEジェネシスエアドロップ」の全貌
くりぷと知っ得情報8月5日号
前号では、Hyperliquidが一夜にして世界中の注目を集めるきっかけとなった「HYPEジェネシスエアドロップ」の全貌を深掘りしました。
今回は、Hyperliquidが単なる「暗号資産の取引所」を超え、株式・金・原油・為替といった伝統的な金融資産の世界に本格的に踏み込んでいる最新動向を解説していこうと思います。
Hyperliquidがウォール街を変える?
「ウォール街を変える」という表現は、業界関係者や大手メディアが相次いで発信しています。
2026年5月29日に、ニューヨーク証券取引所(NYSE:New York Stock Exchange)の親会社、インターコンチネンタル取引所(ICE:Intercontinental Exchange)のCEO、Jeffrey Sprecher(ジェフリー・スプレッチャー)氏が「HyperliquidはNASDAQより規模が大きい」と発信しました。(出典:CoinDesk、Coinpost)
また、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ:The Wall Street Journal)は「ウォール街の暗号資産版コンビニになりつつある」と報じています。(出典:ChainCatcher)
さらには、ゴールドマン・サックス(GoldmanSachs)が2026年第1四半期にHyperliquid関連株への出資を開示、
BitMEX(※)創業者のArthur Hayes(アーサー・ヘイズ)氏は「Hyperliquidが、ウォール街やBinance(バイナンス)などの大手取引所のパーペチュアル先物市場のシェアを狙っている」と発信するなど、伝統的金融業界とHyperliquidの距離は急速に縮まっています。(出典:Motley Fool、Decrypt)
(※)BitMEXは2026年9月23日に正式に閉鎖される予定です。
では実際に何が起きているのか、詳しく見ていきましょう。
伝統的金融市場の「不便さ」
まず、従来の株式・金・為替取引の限界を整理しておきます。
たとえば日本に住む投資家がアップル株(AAPL)を買いたいと思っても、米国市場(NYSE・NASDAQ)の取引時間は日本時間で22時30分〜翌朝5時(冬時間23時30分〜翌朝6時)です。
つまり日中に株価が急変しても、取引できるのは深夜だけです。
金(ゴールド)や原油も、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)など主要市場には週末の取引休止時間があります。
今年初頭に中東で地政学的緊張が高まった際、週末に金・原油の価格が大きく動くことが予想されましたが、従来の取引所は閉まっており、投資家は月曜の市場再開まで指をくわえて待つしかないという状況になりました。
Hyperliquidはこの「不便さ」を根本から解決しようとしています。
HIP-3がもたらした革命〜「誰でも市場を作れる」インフラへ
2025年10月13日に稼働を開始したHIP-3(Builder-Deployed Perpetuals)により、条件を満たせば誰でもHyperliquid上に新しい取引市場を開設できるようになりました。
この仕組みを使って生まれたのが、株式・コモディティ・株価指数(※)の24時間先物取引市場です。
Grayscale Researchは2026年6月のレポートで、「Hyperliquidは、もはやAmazon Web Services(AWS)に近い存在だ」と評しています。(参考)
株式取引所というよりも、開発者が上に市場を構築できるクラウドインフラのようなものだ、という意味です。
(※)株価指数とは、複数の企業の株価を一定のルールで計算してまとめた「市場全体の体温計」のようなものです。
S&P500はアメリカを代表する500社、ナスダック100はアップル(AAPL)、エヌビディア(NVDA)、マイクロソフト(MSFT)などテクノロジー大手100社の動きをそれぞれ反映します。これらをHyperliquid上で24時間先物取引できるため、たとえば「米国市場が閉まっている日本の昼間に、S&P500が下落しそうだと感じたらすぐにヘッジできる」という使い方が可能になります。
TradeXYZの登場
HIP-3の最大の活用者がTradeXYZ(トレードXYZ)です。
TradeXYZは、Hyperliquidのエコシステムを支えるトークン化プロトコル「Unit」が運営するパーペチュアル先物取引プラットフォームです。
2025年10月、HIP-3の稼働と同時にHyperliquid上で最初のデプロイヤー(開設、展開者)として登場しました
TradeXYZについて
TradeXYZの主な特徴を整理します。
①圧倒的なシェアHIP-3全体のオープンインタレスト:未決済建玉(※)の90%以上を占める、HIP-3市場の圧倒的な最大プレイヤーです。
30日間の先物取引量は約532億ドル、建玉残高は約15億4,000万ドルに達しています。
TradeXYZはHIP-3稼働直後にXYZ100(NASDAQ100に連動する合成指数)を立ち上げ、その後エヌビディア(NVDA)、テスラ(TSLA)、グーグル=アルファベット(GOOG)、アマゾン(AMZN)などの米国株先物、CME先物価格に連動した金・銀の先物を次々と開設しました。
(※)オープンインタレスト(Open Interest:未決済建玉)とは、先物取引やオプション取引、暗号資産のデリバティブ市場において、反対売買や決済が行われずに市場に残っている「アクティブな契約の総数」を指します。
②S&P500の正式ライセンス取得2026年3月、DeFiプロトコルとして初めてS&P500の正式ライセンスを取得しました。
「S&P500の先物をKYC認証(本人確認)なし、24時間365日取引できる」という、従来の金融市場では考えられなかった環境が実現した歴史的な瞬間です。(参考)
③FOMOアプリの共同開発先月、2026年6月には、Hyperliquidと共同でFOMOというモバイル取引アプリを立ち上げていて、より多くのユーザーがスマートフォンから伝統的資産を24時間取引できる環境づくりに取り組んでいます。
一方、注意点として、集中リスクという課題も指摘されています。
HIP-3市場の90%以上がTradeXYZ一社に集中していることは、「分散型エコシステム」としての構造的なリスクとして指摘されていて、Blockworks Researchはこの集中度を警告しています。(参考)
将来的には参入障壁(50万HYPE:約3万ドルのステーキング要件)の引き下げなどにより、複数のデプロイヤーが競い合うエコシステムへの移行が期待されています。
急成長するHIP市場
HIP-3市場の成長スピードは、データを見るだけで圧倒されます。
HIP-3市場のオープンインタレストは、2026年1月の約7億9,000万ドルから6月のピーク時には約32億ドルに達しており、約5ヶ月で4倍以上の成長を記録しました。 (参考)
また、HIP-3市場がHyperliquid全体の先物取引量に占める割合は、2026年1月の約2%から2026年6月には約50%へと急拡大しました。
つまりHyperliquidで行われる取引の約半分は、暗号資産だけではなく、株式・コモディティ・株価指数の取引になっているということになります。(参考)
時期HIP-3のOI(建玉残高)Hyperliquid全体に占める割合2026年1月約7億9,000万ドル約2%2026年3月約14億3,000万ドル約35%2026年6月(ピーク)約32億ドル約50%
出典:The Block・Grayscale Research・CoinGecko
「地政学的緊張」が証明した
今年、2026年2〜3月、米国・イスラエルとイランの軍事衝突によりホルムズ海峡の封鎖危機が発生し、原油・金が急騰した週末、従来のコモディティ取引所が閉鎖している間、西アジアで地政学的緊張が高まった週末、従来のコモディティ取引所が閉鎖している間、トレーダーたちはHyperliquidで原油・金・銀を24時間取引し続けました。この週末だけでHIP-3市場がHyperliquid全体の取引量の約40%を占めるほどの盛況ぶりでした。(参考)これは「Hyperliquidが本当に必要とされる瞬間」と言われていて、伝統的な取引所が休んでいる間も、世界中のトレーダーがリスクをヘッジし、ポジションを調整できる場として機能したことになります。

SpaceX上場前に「先物」が動いた
HIP-3の可能性を示す象徴的な出来事が2026年5月に起きました。TradeXYZは2026年5月18日にスペースエックス(SPCX)のIPO前(プレIPO)先物市場を開設しました。
スペースエックス(SPCX)がS-1登録書(上場申請書)(※)を提出するわずか2日前のことで、開設直後に建玉残高が5,000万ドルを超えました。(参考)「企業が上場する前から、その株の先物を24時間取引できる」という、従来の金融市場では考えられなかったことがHyperliquid上で実現しました。
(※)S-1登録書とは、米国での新規株式公開(IPO)用の書類で、米国企業がIPOや上場を行う際、米証券取引委員会(SEC)に提出する登録届出書(Form S-1)を指し、事業モデルや財務情報などが記載されます。
Hyperliquidで取引できる伝統資産現在、Hyperliquid上で24時間取引できる伝統的資産をまとめました。
カテゴリ主な取引可能銘柄米国株(個別)エヌビディア(NVDA)、テスラ(TSLA)、グーグル=アルファベット(GOOG)、アマゾン(AMZN)、アップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)、メタ(META)・など指数S&P500・NASDAQ100(XYZ100)・ダウ平均コモディティ金・銀・原油・天然ガス為替EUR/USD・USD/JPYなど主要通貨ペアプレIPOスペースエックス(SPCX)など上場前企業の先物予測市場(HIP-4)BTCの日次価格予測・マクロ経済指標など
予測市場(Outcome Markets)
為替(EUR/USD、USD/JPY、GBP/USDなど主要通貨ペア)や金・原油などのコモディティを、従来の取引所が閉まっている土日・深夜も取引できます。
取引量の最新データはDatawalletやArtemisでリアルタイムに確認できます。
HIP-4=予測市場という新しい金融商品
また、予測市場という新しい金融商品、HIP-4(Outcome Markets)が今年、2026年2月2日に発表され、同週にテストネットで稼働を開始し、2026年5月2日にメインネットで公開されました。(参考)最初のHIP-4市場は「ビットコイン(BTC)の価格が毎日UTC6:00(※)時点でいくらになるか」を予測する契約で、毎日自動決済される仕組みです。その後、米国のCPI(消費者物価指数)など、マクロ経済指標の予測市場も開設されました。詳細は公式ドキュメントで確認できます。(※)USTとは、世界共通の基準となる時刻である「協定世界時」のことです。高精度な原子時計を基に作られており、日本の標準時(JST)よりも9時間遅れています。
HIP-4の予測市場には、重要なルールがあります。「答えが客観的に一つに決まる問いしか扱えない」という点です。例えば、「ビットコイン(BTC)は6月30日UTC06:00時点で何ドルか?」という問いは、その瞬間の価格データを見れば誰でも同じ答えにたどり着けます。
しかし、Hyperliquidのバリデーターが「この答えは正しいか間違いか」を人間が投票で決める仕組みはなく、あらかじめ指定した客観的なデータソース(価格フィード・政府統計など)を参照して自動的に決済されるため、「解釈の余地がある問い」は扱えない設計になっています。現在すでに開設されている市場の例を挙げると、・BTC日次価格(毎日UTC06:00時点) → HyperCore上のBTCマーク価格が自動参照されて決済
・米国CPI(消費者物価指数) → 米国労働統計局の公式発表データで決済(2026年6月10日に初決済)
今後展開が予定されているイベントの例として見てみると、・暗号資産マイルストーン:「ETHは2026年末までに1万ドルを超えるか?」
・マクロ経済指標:「次回FOMCで利下げは行われるか?」
・スポーツ結果:「ワールドカップ決勝でどの国が勝つか?」
・選挙結果:「次の米大統領選で誰が勝つか?」スポーツや選挙は「客観的に答えが決まる」ため扱えますが、「どの政策が良いか」のような主観的な問いは扱えません。
この「客観性」という制約が、HIP-4とPolymarketなどの既存予測市場と差別化するポイントでもあります。参照:公式ドキュメント・CCNによる詳細解説
「ウォール街を変える」〜変えつつある点
2026年5月時点で、Hyperliquidのトレーダーのうち、トークン化された実物資産(株式・コモディティ・プレIPO株)の取引が全体の約47%を占めるまでに拡大しています。
米国の大手銀行シティグループ(Citi:Citigroup)は、2026年6月のレポート「Tokenization 2030〜Wall Street On-Chain」で、米国の個人投資家の10%がオンライン取引プラットフォームに移行した場合、トークン化株式への需要は2030年までに2兆6,000億ドル(423兆8000億円)に達する可能性があると試算しています。(出典:Citi公式、Coindesk)冷静に見る必要も‥‥一方で、現実は冷静に見る必要もあります。
従来型の世界株式市場全体(時価総額約134兆ドル規模)と比べると、Hyperliquidのトークン化株式市場はまだ0.001%にも満たない規模です。
Citiが予測するトークン化株式市場2兆6,000億ドルはその約2%に相当します。つまり「世界の株式市場のわずか2%がトークン化されるだけで、2兆6,000億ドル規模の新市場が生まれる」という試算ですが、各国の規制対応・ライセンス取得・決済インフラとの接続など、越えなければならないハードルが多く残っています。CME GroupとHyperliquidの関係2026年5月15日、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME Group:Chicago Mercantile Exchange)とインターコンチネンタル取引所(ICE:Intercontinental Exchange)が、米商品先物取引委員会(CFTC:COMMODITY FUTURES TRADING COMMISSION)と議会関係者に対してHyperliquidへの規制強化を求めるロビー活動を行っていることがBloombergによって報じられました。(参考)CMEとICEは「Hyperliquidの匿名・24時間取引環境が市場操作や制裁回避に利用される可能性がある」と主張し、特に原油市場のグローバルベンチマーク(価格指標)が歪められるリスクを警告しています。(出典: CoinDesk)石油関連契約の平均日次取引量が2026年4月に7億ドルを超えるまでに急拡大したことが、CMEとICEの危機感を高めた背景にあります。
ハイパーリキッド(HYPE)側の反論これに対してハイパーリキッド(HYPE)は、新設した米国のロビー団体「Hyperliquid Policy Center」を通じて「Hyperliquidのオンチェーンの透明性は不正行為への強力な抑止力となっており、規制当局や法執行機関による監視・調査を容易にする」と反論しています。(出典:The Block)
この対立が意味すること‥‥
U.Todayはこの対立を「ウォール街とDeFiによる世界の資本フロー支配をめぐる最初の公開戦争」と表現していて、ワシントンはTradFiのロビー活動に従うか、金融市場の進化を認めて公開ブロックチェーンの新たな規制枠組みを構築するかというジレンマに直面しています。(出典:U.Today)

まとめハイパーリキッド(HYPE)は今、「暗号資産の取引所」から「あらゆる金融資産を24時間取引できるインフラ」への変貌を急ピッチで進めています。その変化のスピードは、データが如実に物語っています。
2026年初頭に2%だったHIP-3市場の取引量シェアが、わずか半年で50%に達したという事実は、トレーダーたちが「24時間・KYCなし・手数料が安い伝統的資産取引」を強く求めていることの証です。ウォール街の「夜間窓口」として始まったHyperliquidの伝統的資産取引が、やがて「24時間銀行」として金融市場の主役になる日が来るかもしれません。おわりに今回はここまでです。次回・は「Hyperliquidのライバルたち 」として、DEX市場での競合関係を分析したいと思います。お読みいただきありがとうございました。